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渥美慶祐

製茶問屋/茶屋すずわ

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人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。

自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。

一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

渥美慶祐(製茶問屋/茶屋すずわ)

今年で創業173年を数える静岡市の製茶問屋[鈴和商店]の6代目にして、「現代の茶屋」「暮らしのなかの寛ぎとしてのお茶」をコンセプトにしたショップ[茶屋すずわ]の店主も務める渥美慶祐さん。茶農家が育て一次加工したお茶(荒茶)を鑑定し、品種による特性はもちろん、その年その時の仕上がりを判断してブレンドや仕上げを行い完成品となるお茶をつくる。常日頃たくさんの種類のお茶に触れ、香りや色や味わいに感覚を澄ます渥美さんに改めてお茶を一種類ご紹介いただきたいとお願いしたところ、用意してくれていたのはこの日のために少量ブレンドしたというお茶でした。

「あ、ちゃんと売ってるお茶がよかったですか!?」と慌てた様子の渥美さんでしたが、最高のお計らいに御礼を伝えてその貴重なお茶を見せていただきました。

「静岡の天竜と春野の手摘みのお茶に、牧之原の坂部っていう地域の深蒸しをブレンドしたものになります。お茶は毎年味が変わるものなので、ブレンドするときは自分の中での蓄積からイメージをして、作ってみて、微調整という繰り返しです」

同じ静岡県の茶葉をブレンドしてくれた背景には次のような想いがあるから。

「このスタンダートなお茶に対して発酵茶だったり振れ幅があるものを出すとわかりやすくて面白いですよね。でも、煎茶、緑のお茶で、感動をつくりたいなってすごく思っていることもあり、静岡の茶葉のブレンドにしました。それってすごく難しいんですけど、それができない限り、お茶屋が世の中に広まっていかないのかなって」

「やっぱり一歩入ってきてもらえないと、感動って生まれないんですよね」と渥美さんは続けます。「入ってきてもらうための導線みたいなものがないと、そこの美味しさに気づいてもらえないところがあったり」。

その「導線」とは、まさに渥美さんにとってのお茶の心象風景とつながるものでした。渥美さんがお茶する道具として愛用している、アンモナイトの化石、水晶に黒曜石、黒柿を息子さんと削ってつくった茶通し、そして弥生土器とそれを真似て自作した“指びねり”の茶杯。

「日本茶って、見立てという文化があるじゃないですか。ままごとみたいな感じですけど、子供と一緒にお茶会をするときに、こういう石とか、土器とか、茶則とか茶通しとか、自分で見つけてきたり作ったりしたものをよく使うんですよね。安倍川っていう大きい川があって、そこにすごい色んな種類の石がある場所があるんですよ」

お茶そのものを日々つくっている渥美さんが、お茶の周辺のものの方を一層熱く語る姿は、とても魅力的で惹き込まれるものなのでした。

「お茶一杯にしても、感じ方ってみんな違うと思うんですよ。同じお茶を飲んでるはずでも、生きてきた環境や、そのときの味覚とか気分とかで感じ方って全然違うと思っていて。そう考えると、(他人の評価ではなく)自分が満足できるお茶をつくればいいんだとすら思います」

自分はお茶をどう感じているか。何気ない存在のお茶を、改めて感じ直す。そのことを、渥美さんは自分の好きなものと合わせることで楽しんで実践しているようでした。

「土器にハマっていて、この前弥生土器を譲ってもらったのですが、これでお茶を飲むんです。まだお茶がない弥生時代の土器でお茶を飲む。そのくだらない感じがいい」

そういえばそういうことか、面白いですね、と一口いただくと、その味は驚くほど、土。オリジナルブレンドの繊細のバランスは、紀元前の原始のインパクトに完全に置き換えられました。

渥美さんには、お茶ってこんなに楽しんでいいんだ、自分なりに愛せるんだ、ということを教えてもらっている気がします。

「お茶を介して、建築でも陶芸でも、いろんな世界にいけますしね。お茶だけでも楽しめる面白いものだと思っていますけど、それ以外のものの方がお茶の美味しさには関与しているのかもなって思いますね」

「みんなといて、気づいたらお茶があって飲んでいたみたいな感じがいいなぁって思っています」

その言葉通り、お茶が脇役になってしまうほどさまざまな話題が飛び出しました。茶葉のブレンドよりもなお奥深いお茶の世界を体験させていただいたひとときでした。

渥美慶祐|Keisuke Atsumi
静岡県静岡市出身。1848年創業の製茶問屋[鈴和商店]の6代目代表、[茶屋すずわ]店主。
chaya-suzuwa.jp
instagram.com/chayasuzuwa
「茶屋すずわ 渥美慶祐さん 伝えたいお茶の豊かさと 茶問屋の矜恃」

Photography: Kisshomaru Shimamura
Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki

人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

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