• 作原文子

    インテリアスタイリスト

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    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。

    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。

    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

    作原文子(インテリアスタイリスト)

    色や形、表情、用途、年代や文脈..異なる背景を持つさまざまな“モノ”が、のびのびとした一体感を持って共鳴し合う。つくり手の元を離れ、スタイリングされなければ隣り合うことのなかったかもしれない“モノ”たちが共存しながら、一つひとつの“個”が引き出す空間を作り出す、インテリアスタイリスト・作原文子さん。暮らす人、働く人、そこでモノとともに生活する人の癖や習慣、仕草も想像させる細やかな観察眼を持つ作原さんにとって“お茶”はどのような存在なのでしょうか。一杯のお茶から思い浮かべる色とともに、お持ちいただいたのは、10年ほど前に制作したという『あじさいとお茶と』というZINE。

    「お茶を飲むと、毎朝、母が家族全員のお茶を淹れてくれていた光景が浮かびます。以前、[COW BOOKS]さんの企画で『あじさいとお茶と』というZINEを作らせていただきました。『あじさいという花は小さい花が集まっている家族の花。だから綺麗に見えるんだよ』と、母が話してくれていたことを綴っている文章なんですが、これも結局お茶と通じていることなんじゃないかな。私自身、周りで支えてくれている人との結びつきでこういった紙を使った本やポストカードなどの表現が大好きで。すごくアナログな視点なのですが、お茶も結局人の手で摘まれているものだから、根底では変わらないの部分もあるのかもしれない。優しさと強さが同居している、しいて色を言うならば、懐かしくて優しい色ですね」

    今でも、日頃からお茶を飲むことが習慣になっているという作原さん。お持ちいただいたのは、新茶の季節、静岡にあるご実家のお父さんから、毎年送られてくるという茎茶。

    「高級なものではないんですが、我が家のスタンダードです。子供の頃から母とのコミュニケーションが多かったので、 父とはあまり会話することも少なかったのですが、最近では話す機会も増えて。気がつけばいつも新茶は送ってきてくれるんですよね。送るという作業は、母が作ってくれた私たち家族の行いごとになっているのだったら、それはそれで嬉しいなと。お茶が家族を繋いでくれている感覚がありますね」

    どんなに忙しい日々にも、1日の合間にお茶一杯に向き合う時間をとる。家族や、暮らし、健康に生きていくこと….。そんな“あたりまえ”の日常に立ち返る時間。作原さんにとって”お茶”の存在は、いつでも変わらずに遠くから優しく見守っていてくれるような、自らの原点を思い出させてくれる存在なのだそうです。

    「今こうして健康でいることも、感性を大事に、人やモノとの関わりの中で表現をしていくインテリアスタイリストという仕事において、自分のスタート地点にあるものだと感じています。子どもの頃は毎朝、母が家族全員のお茶を淹れてくれていて。コロナもあって、今は母にも会えない状況が続いているんですが。そういうことがあっても前向きに頑張っていけるメンタルを作ってくれたのはお茶なのかもしれない。生きていく上では、綺麗事だけではなく、辛いこと、悲しいこともたくさんある。でもきっと、それが、人間らしさであって。 変わらずそんな日々を見続けてくれるのがお茶の存在なのかな」

    作原文子|Fumiko Sakuhara
    インテリアスタイリスト。岩立通子氏のもとでアシスタントを経験した後、1996年に独立。主に雑誌、 カタログ、TV-CM、エキシビション、ショップディスプレイ、舞台などのスタイリングを中心に活動。 2007 年には初めての映画美術にも関わる。手掛ける雑誌は、「Casa BRUTUS」「Figaro japon」「Vogue Nippon」「BRUTUS」「Men’s Non-No」などのインテリア誌、女性誌、男性誌と幅広く、日本のイン テリアスタイリストとして第一線で活躍。柔軟な感性を活かし、さまざまなテイストをミックスした 独自のスタリングは、男性女性問わず定評がある。「Found MUJI」、「INTERSECT BY LEXUSU」のウィ ンドウディスプレや、企業の展示会の空間ディレクションなども行う。
    mountainmorning.jp/comunity

    Photography: Kisshomaru Shimamura
    Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki

    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
    多様性の大切さを感じる特別企画。
    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
    目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
    目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
    あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

    COLOURS BY CHAGOCORO