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Seiho

トラックメイカー/DJ

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人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。

自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。

一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

Seiho(トラックメイカー/DJ)

平井堅、Chara、YUKI、三浦大知、矢野顕子、PUMPEEなど多種多様なアーティストの楽曲制作にプロデューサーとして携わる他、トラックメイカー/DJとして自身の作品を携え国内外でステージアクトをこなし、融通無碍に活動する音楽家のSeihoさん。音楽活動の他にも、東京・日本橋で和菓子店[かんたんなゆめ]をプロデュースし、日本茶にも深く親しむSeihoさんにお茶について語っていただきました。

「二十歳ぐらいから海外ツアーに行くようになって、お世話になる人に抹茶点ててあげたら喜んでくれるんちゃうかってなって、おばあちゃんからもらった野点用のセットをいつもツアーのバッグに入れていた」

ステージやアートワークでは奇抜な出立ちのイメージがあるSeihoさんですが、分け隔てのない親しみやすい口調で、早速お茶との接点を教えてくれました。

「もともとおばあちゃん子。お茶の淹れ方とか点て方とか、一緒に食べるお菓子とか、おばあちゃんとの会話で教えてもらっていた。海外ツアーで現地の人に色々もてなしてもらって、こっちから渡せるものって考えたときに、お土産の飴ちゃんやなくて、お茶かなって。(自分でも)梅干しと鈍刀煮っていうイワシの佃煮をちょっと食べてお茶飲むだけで、日本に一回帰ったのと同じ効果ありました」

そのころからお茶にハマっていったというSeihoさんですが、今年は新茶摘みも体験したそうで、訪れた茶園では刺激を受けることが大変多かったのだそう。

「こないだ、FAR EAST(TEA COMPANY)に連れてってもらって、静岡の[駄農園]に行ったんですけど、あの体験がめちゃめちゃよかったんですよね。話聞きながら摘んで、手で釜炒りしてるところ見せてもらって、その間にお昼ご飯作ってくれて。お茶っ葉の天ぷらと、庭でとった木の芽と、しらすがのってるだけのご飯がめちゃめちゃおいしくて。そのときのお茶を飲みながら、(園主の)高塚さんの話を聞いてたんです。[駄農園]は静岡だけど有名じゃない産地にあるから、自分たちのオリジナリティをどうやって出そうかと思って、先代から品種を多く作ってた。その名残で今色んな品種があって、ブレンドしたり、紅茶にしたりしてたら、市販のお茶と全然違う珍しいお茶を出せて人気になってきててって話のときに、『やっぱり貫くには変わっていくしかないんですよ』って言葉がパッと出てきて。俺、うわぁ!って一気に刺さって。今も泣いちゃうかもしれへん……」

スタイルや信念を貫くということは、安定や安住、固執ではなく、常に変化、更新を求めてこそ。そうした言葉が、お茶づくりをしている人から、何気ない会話の中で発せられたことにSeihoさんはいたく感動したのだと言います。さらには、お茶を育てるのにかかる時間は短くても3年〜5年。日々曲づくりを行うSeihoさんにとっては、その長いタームでものづくりに向き合う人の言葉には多くの刺激がありました。

「植えてから3年でやっと最初のお茶が摘めて、味が整うまでに5年くらいかかるじゃないですか。だから本当に、変わり続けるしかないけど、5年は成果が出ないから、その間は信じるしかないんですよ。こういう曲今イケてるから作ろうっていうタームではない。いやぁ、すごい。ほんまに緑茶はすごいよな。一回雨降るだけで味が変わっちゃうから、天気との戦いもあるし。僕らはどうしてもアウトラインの仕事してるんやなって思うんです。最後に帳尻合わせられることが多いけど、多分農業は天候とか自分ではどうにもできないことが関与しちゃうから、もう丁寧につくるしかなくて。アーティストとして、自分が忘れかけているものがたくさんあるなぁと」

普段から、お茶を淹れる行為も含めて楽しんでいるというSeihoさん。公園に茶器を持って行って飲むことも多く、ただボーッとするより手を動かしている方が落ち着くのだそう。お茶から思い出すのは、幼い頃に多くの時間を一緒に過ごした祖母のこと。

「おばあちゃんのところでお菓子食べたりお茶飲んだりしてたんで、法事とか行って和菓子がパッて出てきたときに所作がわかってるんですよ。クリエイターはみんなそうだと思うんですけど、自分は特別やと思って育ってきたら、小学校入ると『わ! 俺と同じように特別と思ってるやつめっちゃおるやん』って。そんときに初めて自分が特別じゃないことに気づく。でも、それがアイデンティティを掴まえる最初の瞬間やと思ってて。他の子らはジュースが好きやけど自分はお茶が好きとか、ケーキじゃなくて和菓子が好きとか、そういうのが根っことしてのアイデンティティにあるんですよね。[かんたんなゆめ]には、ちっちゃい子もよく来てくれるんですけど、それがすごい嬉しくて」

アイデンティティや自分についてこれから考えることになるであろう子どもたちに、この場所を通じて日本茶や和菓子との接点を与えることができて嬉しそうなSeihoさん。

「さっき言った、海外に行ったときに何でお茶を持ってったかっていう話ともつながってて。日本人としてのアイデンティティに(お茶が)あるっていうか、自分のアイデンティティを形成したものの中に存在するなっていう。音楽もそうですけど、お茶飲んでるとき、和菓子食べてるときは、それを感じるかな」

小さなときに抱いた自分の特別な部分やアイデンティティの根っこの部分を「発動させたい」というような思いが、今の活動にも生きているのだと言います。

お茶というトピックから面白いお話を次々に披露してくれるSeihoさんに、あらためて、お茶を飲むとき心に浮かぶ色や景色は何か、尋ねました。

「そうですね、お茶飲むときは……でも、お茶のときってなんも考えない時間やん。だから頭に何かあると良くないんよな。だから、無です、実際は。何考えてたんかは、飲んだ後にわかるっていうか。例えば、楽器とか歌上手くなりたい人って、多分ランニングした方がいいんですよ。走り込んでるときって、モチベーションとか自信がめっちゃ上がるような成分が出てる気がする。だけど、それとは逆な場合もあって、例えば泳いでいるときとかは自分に対して懐疑的になるというか、『これでいいんか、俺?』みたいな考えになる。作品に対しても同じで、自分に懐疑的な状態じゃないといい作品ができない。『こんな作品でいいんか、俺は!』みたいな。お茶飲んでるときは、僕の中ではそれ(気分が上がったり下がったり)のどちらにもいかないようにむしろ気を遣うっていうか。自分の中の葛藤を無にするっていうか、一回フラットにする。だって、お茶なんかこんなん、やばいですよ。贅沢! 『あぁ気持ちいい』っていうのと、『お茶なんかしてる場合じゃない!』というのが両方来るとき、フラットな状態になれる」」

「フラットになる」という言葉から思い浮かんだのは「中庸」という儒教の教えとして有名な言葉でした。出過ぎず引き過ぎずブレが少ない、事なかれ主義と捉えられることもありますが、人それぞれの性格を認めながら、極端なことも含めて、より大きな調和を目指すという考え方の方が、しっくり来る。Seihoさんのお話を聞いた後にはそんなことすら感じました。実にカラフルでのびのびとした印象のSeihoさんとのお話は尽きませんでしたが、今回はここまで。

様々な分野で活躍する35名の方々に「お茶の色」をテーマにお話を聞いた「COLOURS BY CHAGOCORO」。人それぞれの出自やストーリー、普段飲んでいるお茶の種類ひとつとっても色とりどりでした。個性をみつめて、より大きな調和を目指す。無意識のうちに失われかねない多様性を考えるきっかけをお一人おひとりからいただくことができました。

Seiho|セイホー
1987年生まれ、大阪出身の電子音楽家、プロデューサー/DJ。ヒップホップやポストダブステップ、エレクトロニカ、チルウェーブなどを取り入れたサウンドで頭角を現し、2011年アルバム「MERCURY」でデビュー。2013年にはMTV注目のプロデューサー7人に選出されるなど、国内外で高い評価を受ける。さらには、おでん屋[そのとおり]、和菓子屋[かんたんなゆめ]のプロデュースもこなす。2021年5月には、多彩な5組のミュージシャンをプロデュースしたミニアルバム「CAMP」をAmazon Musicにてリリース。
instagram.com/seiho777
twitter.com/seiho777
「Camp」をAmazon Musicで聴く

Photography: Kisshomaru Shimamura
Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki

人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

COLOURS BY CHAGOCORO