• 目黒[kabi]を訪ねて
    Licaxxxさんと
    お茶の見せ方を学ぶ
    Ocha SURU? Lab. Part 6

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    Ocha SURU? Lab.

    私たちの日常のライフスタイルがたえず変化するなか、お茶のあり方はどうだろうか。「暮らし」と「お茶」との間に「問い」を立て、現代の感覚で私たちなりの「解」を探求する企画「Ocha SURU? Lab.」。その探求の道のりの中で、皆さまの日常の中の「お茶する」時間がより楽しいものになればという想いとともに、CHAGOCORO編集部が総力を挙げて研究を重ねていきます。

    先週に引き続き、Licaxxxさんと[kabi]の江本さんお二人のお話をお届けします。前回は、ノンアルコールを楽しんでもらうために、積極的に日本茶を提案しているという江本さんの考えを聞くことができました。お茶の美味しさに改めて気づいてもらうために、どんな考え方ができるか、お話を聞いていきます。


    グラスで見せる。お茶に興味を持ってほしい

    — 最初の回でLicaxxxさんには検茶のようなことをしていただいて、それから色々な種類のお茶を家でも飲んでくださっているそうですね。

    Licaxxx 色々飲んでますよ。飲み方も変えて。暑い時にはめっきり氷水出しで飲んでますね。水出しもフィルターインボトルとかで冷蔵庫につくっておいたり。

    — 今日の「あさつゆ」も氷水で冷蔵庫に入れてつくるとおっしゃいましたね。

    江本 そうですね。お店だと真空にして冷蔵庫に入れています。真空にするのは、スペース取らないのが一つと、酸化しづらくなるということですね。色は味より早く変わってくるので、最初に注ぐときの溌剌としたグリーンはそういうやり方をしないと出ないかもしれないです。もうちょっと足しましょうか。あと一杯くらいあります。

    —色が本当にきれいですね。ワイングラスで日本茶を出すと、それだけで驚かれるお客さんもいそうですよね。

    江本 そうですね。一番はお茶に興味を持ってほしいということです。味は間違いないので、あとはどうやって気にしてもらえるか。もちろん、湯呑みでもいいわけですが、そういった狙いもあります。ワイングラスも形によって、合う合わないがありますね。旨味の強いお茶の場合、舌全体で感じた方がいい。口が細いグラスだと、液体が流れ出てくる速度が速くなるので、その分奥に届くのが速くなって横に広がりにくくなる。ホースの口をしぼると勢いが強くなりますよね。それと一緒です。

    Licaxxx そういう差なんだ。

    江本 それこそ料理を食べていて、パッと飲んでしまうと、味わうことって難しい。僕らはお客さんに対して「(お茶の味を)気にしながら飲んでください」と言うのではなく、グラスでコントロールするということも考えているんです。

    Licaxxx 素敵だな、それは。

    — たしかにワインなどに比べると、お茶の味の違いを気にして飲むという意識はまだまだ低いですよね。

    江本 日本茶も味のレパートリーは結構あります。中国茶とか台湾茶に比べると発酵によるバリエーションは少ないですが、お茶の葉の味わいで勝負するところが多い。今ある日本茶のバリエーションでも、十分いろいろ楽しめると思います。それは、コーヒーみたいにこだわって飲む文化がまだそこまでないということもありますけどね。お茶を家で飲んだりとか、焙じ茶だったら誰がローストしたとか、どの機械で焙じたとか、まだコーヒーのようにはなっていない。なので、まず今ベーシックにある、手元にあるものから始めるというか、それだけでも十分楽しめるぐらいバリエーションはあります。

    Licaxxx 多分、日本人にとって身近すぎてさ、お茶が。みんな日本に住んでて、周りにお茶いっぱいあるはずなのに、逆に知らない。だから、こういうところでちゃんと体験しないと、「お茶って旨味あったんだ」ってことに気がつかないかな。

    江本 本当にそうだと思う。だからうちが出すお茶は、ペアリングもそうだけれど、一つのグラスのインパクトがあるものを選んでいて。お茶はおいしいと思うし、飲む人のパイが増えてほしいと思うから、しっかりインパクトがあるものにしている。プラス、僕らの説明が加わるから、余計味を感じやすくなる。「こんなんあるんだ!」ってなってほしいかな。玄人系のお茶だと、いつも飲んでるお茶の感覚にけっこう近いところがあったり、うちも音楽ガンガン流しながら料理が出してるから、気が散っちゃって、普通の「お茶だなぁ」って感じで飲まれちゃうかもしれない。「お茶」っていうワードに引っかかってほしいと思ってます。俺ら、広めていくのが役割なので、ワインもそうだし、お茶もカクテルもウィスキーもブランデーとか、それこそ発酵ジュースとかも、広げていって飲む人のパイを増やすということ考えています。

    Licaxxx 私も旨味めっちゃ強いやつ飲んでから気づいた。「お茶って全然違うんだ」ってなった。

    江本 そう、けっこう違う。あと、ほうじ茶ってローストしてるから難しいんですけど、一度興味を持ってもらって、次にまた俺らが説明しながらさらに集中して飲んでもらうと味がつかみやすくなったりする。面白いと思ってきたら、お茶屋さんはいっぱいあるから他にも行ってみたらいいですし。

    Licaxxx ほうじ茶も全部同じに感じてたけど、一番茶のほうじ茶とかめっちゃうまいよね。

    江本 全然違う。

    Licaxxx びっくりした。本当に。

    — 他の嗜好品と呼ばれる飲み物でも、インパクトがあるものに出合えるかは大事ですよね。Licaxxxさんもそうやってここでワインから何から覚えていったんですね。

    Licaxxx 味は覚えるんですけど、名前は覚えてない。

    江本 俺も最初そうだった。美味しかったっていう記憶ぐらいしかなかった。

    — それはあります、自分もそうです。と同時に、覚えておかなきゃって意識して、かえって楽しめないなんてこともある気がします。

    江本 そうですね。僕は、あまり考えなくてもいいけど、お店だけは選んでほしいと思います。ちゃんとしたお店に行けば覚えなくてもいい。覚えるのは僕らの仕事なので。そこの店に行けばいいワインが飲めたりとか、いいお茶が飲めたりとか、そういうところはなるべく紹介したいです。自分たちのところでお茶に興味持ってもらえたら、次はどこどこでこういうの飲めますよとか、もっとカジュアルにこういうのありますよとか。まず僕らがエントリーで、そこからもっともっと広げてもらって、飲む人が増えたときにやっと、「kabiはこんなのもやってる」ってまた興味を持って来てもらえればいいなと思っています。

    Licaxxx 毎回それで。もう全部、聞いています。

    — いいですね。これを通じてまた興味を持ってくれる人が増えればと思います。今日はありがとうございました。


    お茶屋だけではなく、[kabi]のような人気レストランでもお茶の魅力を伝えているお店が徐々に増えています。味や香りの好みや、気分によって温冷に飲み分けるなど、リーフのお茶を飲み始めてみると、いろんな楽しみ方ができることに気がつきます。良いOcha SURU? 時間が増えますように!

    前回までに、Ocha SURU? Lab.でご紹介をしていた“グラスでお茶を淹れるツール”が、この度皆さんにもお届けできることになりました! VISION GLASS(Part 3)と新潟・燕の新越ワークス(Part 5)の協力により、グラス・急須そして茶こしがきれいにセットになった、見て・淹れて楽しめる新しいツールの誕生です。お茶することの楽しさを体験してほしい。Ocha SURU? Lab.の想いとともに、ぜひ多くの方の元で使っていただければと思います。

    打ち解けた間柄でこそ楽しいお茶の時間に。この取材時からさらに改良を重ねて、初めての方も簡単に使える形に仕上がりました

    詳細の特設ページはコチラ!
    https://www.chagocoro.jp/shop/2444.html

    次回のOcha SURU? Lab.もお楽しみに。

    Licaxxx|リカックス
    東京を拠点に活動するDJ。Fuji Rockなど多数の日本国内の大型音楽フェスや、CIRCOLOCOなどヨーロッパを代表するクラブイベントに出演。ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。レストランシェフに教えてもらってお茶の面白さに目覚め、自ら淹れたお茶を日々たっぷり楽しんでいる。
    instagram.com/licaxxx1
    twitter.com/Licaxxx

    kabi|カビ
    2017年末、目黒通り沿いの日本家屋を改装してオープンしたレストラン。デンマークの1つ星レストランで経験を積んだシェフの安田翔平さんと、アメリカやオーストラリアで経験を積んだソムリエの江本賢太郎さんが日本で出会ったことからスタート。若くして洗練された感性が反映された料理で瞬く間に話題となり、都会の新しいライフスタイルを担う注目店。今年1月には、兜町のマイクロ複合施設「K5」に、新店[CAVEMAN]をオープンした。
    kabi.tokyo
    instagram.com/restaurantkabi

    Photo: Masaharu Hatta
    Interview & Text: Yoshiki Tatezaki

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