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週末の下北で、おはぎとお汁粉、お茶の時間 下北沢[茶房ヽ-TEN-]青木真吾さん<前編>
週末の下北沢駅前は多くの人々で賑わっている。若者の街という代名詞通りの活気も溢れているが、近くに暮らす人たちが買い物をしたり散歩をしたりと、さまざまなリズムが混在しているように感じる。 駅の南西口から徒歩一分のところにあ…
2025.04.18 INTERVIEW日本茶、再発見
下北沢で土日だけ開く[茶房ヽ-TEN-]。店主・青木真吾さん自ら仕込むあんこを使ったおはぎやお汁粉と店主が厳選した日本各地・各種のお茶をゆっくりと楽しめるお店だ。真吾さんは下北沢あるもう一店舗[ヽ-TEN-](過去の記事)と掛け持ちで店に立っているわけだが、今では信頼できるスタッフが真吾さんを支えるというチームができつつある。
店を立ち上げることと同じくらい重要で、あるいはそれ以上に難しいのが、チームをつくっていくことかもしれない。特にお茶を淹れる人になる、というのはまだイメージが湧きづらい職だ。今回は、[茶房ヽ-TEN-]でここ一年働いている市原さんにもインタビューに加わっていただき、そんなことをテーマに聞いてみる。
「自分は人を育てるなんてことまだ言えないですが」と謙遜しながら、真吾さんは自分がお茶の淹れ手として勉強してきたことを思い出しながら話し始めてくれた。
「自分の師匠は櫻井(真也)さんで、やっぱりかっこいいなと憧れて、櫻井さんがお茶を淹れる姿を見て、それを真似て盗んで学んでいくという感じでしたね。先輩の(佐藤)奈緒美さんとかもそうですし、所作とか姿勢、器の持ち方ひとつ取ってもかっこいいなって憧れることができる淹れ手がいるっていうのは大事だと思います。べったなくん(a drop . kuramae)とか、年は下でも影響を与えてくれる存在もいますしね。そういう場合、技術っていうのははっきりと教えられるものではなくて、自分なりに感じて、気になることを聞いて、その意味を知ってやってみて、身についていくものって感じでした」
だから、真吾さんもスタッフにはまず自身が何を大事にしてお茶を淹れたいのか感じてほしいと言う。
「美味しく淹れたい、ロジカルに考えたい、あるいは美しく淹れたい、とかで変わってきますからね。根本にベースがあることが大事なんだと思います。自分自身スタイルがあってないような感じでやっていますけど、考え、思い、想像することが大事だと思う。そういうことを一緒に考えていけたらいいなっていうことくらいですね」
市原さんはライターの仕事の傍らこの店で働くようになった。そのきっかけは、神奈川にある[逗子茶寮 凛堂-rindo-]山本睦希さんの元を取材で訪れたことだったのだそう(CHAGOCOROでの山本さんの記事はこちら)。
「私も、お茶を淹れる人ってかっこいいというイメージがありました。まさに憧れからのスタート。[凛堂]の山本さんのお茶を淹れている姿とお人柄に魅了されました。ご自身のことをサービスマンだとおっしゃるのですが、本当にその通り、目の前のお客さんを喜ばせることを大切にしているんだなと伝わってきました。それはテンにも通じる部分だと思います。目の前の人とどう接するか。
以前に耳の不自由なお客様が3人見えられたことがあるのですが、その時ちょうど真吾さんは買い出しに行っていて私一人で接客する状況になりまして。メモで筆談してなんとか、最後は楽しんで帰っていただけました。自分が何をしてあげられるか、おせっかいにもつながるかもしれないのですが、そういう心が大事なんだって強く感じました。やっぱり、真吾さんの愛され方ってすごいですもん。人間味なんだなって思いますね」
そんな市原さんの言葉に少し照れながらも真吾さんが続ける。
「イチはそういうことも含めて信頼してます。だから一人でも大丈夫だなって、僕は買い出しからなかなか戻らなかったり(笑)。僕もそうでしたけど、少し背伸びしてでも自分でやってみるということは、身体を鍛えるみたいな感じで必要だと思いますね。お店が週末だけなので次のシフトまで一週間空くのですが、それまでに疑問点をまとめてきて質問してくれる。[ヽ-TEN-]の方に入ることが多い芦谷というスタッフも淹茶選手権に出たりいろんな挑戦をしてインプットしてきてくれる。自分も勉強になることが多いのでありがたいですね」
「真吾さんは『自分がいいと思った感覚を信じていいんだよ』と言ってくれます。初心者の自覚があるのでどうしてもプロの目線を気にして、誰かが言うのと同じように感じられているか気にしてしまうのですが、自分の感覚がまず大事なんだと気付かされました」と市原さん。
「第一印象というか、最初の感覚は忘れずに持とうっていうのは言いますね。そこに肉付けをしていけばいいというか。結局、自分の言葉にしないと相手にも伝わらないと思うので」と真吾さん。
お茶屋として大事にするべきことをお二人の会話から受け取ることができた、とても気持ちのよいお茶の時間だった。
「真吾さんは最後必ずお見送りするんです」と市原さん。
「まぁまぁ、階段が急なんで。終わりよければ全てよし、と言いますからね」と真吾さん。
笑顔の二人に見送られ階段を下っていく。
こんなお茶屋がこれからも続き、また各地に増えることを願いながら家路に着いた。
青木真吾|Shingo Aoki
鳥取県米子市出身。専門学校卒業後、飲食店アルバイトを経て、株式会社シンプリシティに入社。中目黒[HIGASHI-YAMA Tokyo]、和食料理店[八雲茶寮]で研鑽を積む。退社後はお茶とお酒に関する様々なメニューを各所で提案。2021年3月、下北沢駅南西口徒歩1分に[ヽ-TEN-]をオープン。2024年2月、同じく東口徒歩2分に[茶房ヽ-TEN-]をオープン。
茶房ヽ-TEN-|SABO TEN
東京都世田谷区北沢2-19−2
土日のみ営業
13:00〜18:00(LO 17:30)
https://www.instagram.com/saboten.shimokitazawa
Photo by Taro Oota
Text by Yoshiki Tatezaki
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内容:フルセット(グラス3種、急須、茶漉し)
タイプ:茶器
内容:スリーブ×1種(素材 ポリエステル 100%)
タイプ:カスタムツール