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2021.07.20

下北沢の隙間にできた1坪の
お茶屋が広げるお茶との接点
[ヽ-TEN-]青木真吾さん
<前編>

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下北沢駅南西口から徒歩1分。そんな駅近の好立地にお茶屋さんなんかあったかなと見回していると「日常の『ヽ』に 一服いかがですか」との文字が目に入ってくる。その印象的な言葉が書かれた白い暖簾のかかる店こそ、日本茶専門の茶屋[ヽ-TEN-](以下、TEN)であった。オープンは今年の3月31日。同店のインスタグラムにも「#日本一小さい」「#一坪とわずか」とは書かれていたが、3人入ればもう満員。本当に狭い。だが茶箱をモチーフとし、黒を基調としたスタンディングスタイルのコンパクトな店内は妙に居心地が良い。ついついくつろぎたくなるのは、お茶の美味しさももちろんあったが、店主・青木真吾さんの柔和な人柄も大きいところだ。なぜ下北沢でお茶を振る舞うのか伺った。

笑顔で出迎えてくれた店主・青木真吾さん。白い暖簾には「日常の『ヽ』に一服いかがですか」の文字

お茶に触れられる一煎のおもてなし

白い暖簾をくぐると、優しい笑顔と共にひとり出迎えてくれた青木さん。まず気になったのは、<抹茶×みちのくりんごジュース><大葉と酢橘すだちと釜炒り茶><桃とほうじ茶>といった他ではあまり見たことのない掛け合わせのブレンドティーだ。

現在、サービスで振る舞われる煎茶。7月の茶葉は無農薬の薮北
(サービス内容は変更になる場合がございますのでご了承ください)

これら3種類のお茶を注文してしばらくすると、青木さんはお店のチラシを敷き、ロゴ部分に置くかたちで1杯の煎茶を出してくれた。戸惑いの表情を浮かべていると「若い方がいきなり煎茶に辿り着くのは難しいので、席に着いた方に1煎目を味わっていただこうとサービスで出しているんです」と説明してくれた。こうして煎茶を振る舞っていただけるとは思ってもみなかったので、素直に嬉しい。取材当日の茶葉は静岡産で無農薬の藪北であったが、セレクトは月ごとに替わるとのこと。

ほっと一服ついていると、店内に良い香りが漂う。青木さんが慣れた手つきで抹茶を点(た)て、氷の入ったグラスにりんごジュース、抹茶と順に注がれた。「よく混ぜてからお飲みください」と促されるものの、はっきりと分かれた色合いはそのまま眺めていたいほど美しい。

2色の色合いが美しい<抹茶×みちのくりんごジュース>。右から<桃とほうじ茶>と<大葉と酢橘と釜炒り茶>も

「このりんごジュースを焼酎で割った『みちのくハイ』を下北沢の行きつけのバーで飲んですごく美味しかったのを覚えていて、今回りんごジュースとお茶を掛け合わせるメニューを考えるにあたって相談して使わせていただくことになりました。りんごジュースと紅茶だと、間違いなく合いますけど、面白くない。煎茶だとりんごジュースの味が勝っちゃう。そこで抹茶を試したらとてもいい感じだったので、あとは割合を調整して仕上げました」

りんごの甘さもほのかに残しつつ、お茶を飲んだときのさっぱりとした清涼感が口のなかで美味しさとともに広がる。

味わってもらいたいのは、お茶

青木さんは鳥取出身、小さい頃からお茶に親しんでいたわけではなかった。上京後、山本宇一さんによる[バワリーキッチン]を始めとしたカフェブームに憧れを抱きながらも、知り合いの誘いから[八雲茶寮]や[HIGASHIYA]などを手掛ける「SIMPLICITY」で働き始めることに。「日本の文化を進化させる」ことをコンセプトに掲げる同社で、日本の伝統文化のひとつとして触れたお茶は青木さんにとって新鮮に映った。

「[八雲茶寮]ではお食事のコースに合わせた飲み物としてブレンドティーを出していたんです。当時の店長で、今は[櫻井焙茶研究所]をやられている櫻井真也さんがメモに書いたイメージから僕がレシピを立ててという経験をさせていただきました。そこでブレンドティーをつくる面白さを感じましたね」

<大葉と酢橘と釜炒り茶><桃とほうじ茶>も出来上がる。それぞれお茶に合わせてブレンドされた酢橘や桃はほんのり香る程度。「味わってほしいのはお茶なので、酢橘や桃はお茶に興味を持ってもらうための入り口という感じですね」。この絶妙な塩梅は前職での経験を通じて培われたものであろう。日本に根付くお茶文化に敬意を払いつつも、お茶の新たな可能性を広げるようとする心意気が感じられる3品であった。

後編の公開をお待ちいただきながら、TENオリジナルブレンドティー<鳳梨パイナップルと釜炒り茶>のレシピを伝授してもらいましたので、ご自宅でつくってみてはいかがでしょう。

ブレンドティーは季節ごとに内容が変わり、どれも手仕事で仕込まれている。2リットルサイズの容器に仕込まれた<鳳梨と釜炒り茶>。「ぜひご家庭でも取り入れてほしい」と話す青木さんが作り方を教えてくれた(下記)

<鳳梨と釜炒り茶>の作り方
2リットルの水に対し、釜炒り茶の茶葉を20グラムと、パイナップルを10〜20グラム(端の硬い部分でもOK)を入れる。半日ほど(8〜12時間)つけておけば出来上がり。
分量はお好みで調整ください。
夜寝る前に仕込んでおけば、爽やかな1杯とともに朝が迎えられます。


青木真吾|Shingo Aoki
鳥取県米子市出身。専門学校卒業後、飲食店アルバイトを経て、株式会社シンプリシティに入社。中目黒[HIGASHI-YAMA Tokyo]、和食料理店[八雲茶寮]で研鑽を積む。退社後はお茶とお酒に関する様々なメニューを各所で提案。2021年3月、下北沢に「ヽ-TEN-」をオープン。
instagram.com/ten.shimokitazawa

Photo: Eisuke Asaoka
Interview & Text: Yoshinori Araki
Edit: Yoshiki Tatezaki

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