• 流山[葉茶屋 寺田園]<前編> 歴史的建築の新しいお茶屋で、リフレッシングな日本茶と甘味を

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    旧街道沿いのリノベーション茶屋

    古い茶屋をリノベーションした[葉茶屋 寺田園]を訪れるため、千葉・流山に来ている。

    流山市は、都心から車で1時間ほどの距離で、江戸川を挟んで埼玉県と隣り合う千葉県北西部の街。2005年のつくばエクスプレス開通以降、都心へのアクセスがよくそれでいて豊かな森に囲まれた街として、子育て世代を中心に人気が高まっている。今年、人口増加率全国一と報じられたこともあり、「流山」という名前をよく耳にするという方も多いのでは。

    元は江戸時代に、関東以北の地域と江戸をつなぐ物流拠点として栄えたのがこの土地の歴史的背景。現在開発が著しいつくばエクスプレス「流山おおたかの森駅」からは少し南西に移動した江戸川沿いのエリアが流山本町と呼ばれる、江戸時代からの街の中心だった。2両編成で走る流鉄線の「流山駅」近く、そんな古い街並みが残るエリアに今回取材した[葉茶屋 寺田園]はある。

    建物は1889(明治22)年に建てられ、国登録有形文化財に指定されている。地域の名主である寺田家が「寺田園茶舗」を営んでいた、元お茶屋さんだ。外観は当時のままに、内装のリノベーションを経て、新たに[葉茶屋 寺田園]として生まれかわったのは、築133年後の2022年8月のこと。

    茶葉を販売していたかつての寺田園茶舗の流れを汲みつつ、喫茶を現代のスタイルで取り入れ、歴史的に人が集まる流山という場所に根ざしていく。そんな思いから、店名の頭には「葉」「茶」「屋」を冠したのだそう。この後ご紹介するブレンド茶を含めた茶葉や茶器を販売するほか、店内ではお茶とスイーツなどのお食事が楽しめるお店となっている。

    ミンティーな煎茶のブレンド

    [寺田園]のドリンクメニューは国内産の煎茶、ほうじ茶、紅茶を基本として、それぞれをベースにしたオリジナルブレンド3種がある。茶葉の選定やブレンドレシピは[櫻井焙茶研究所]によるものだ。

    八女の煎茶をベースにしたブレンドティー「CLEAR」をいただく。ひと嗅ぎすれば、鼻の奥がすっきりとするようなスペアミントとレモンのような香りが特徴的。でも煎茶の旨味も香りとしてしっかりと届いてくる。

    ブレンドティー「CLEAR」(¥715 税込)

    レモン果皮のほろ苦さが緑茶の苦さと合わさってじんわりとした後味をくれるが、爽やかな香りも広がりすっきりとした飲み終わりになる。ブレンドの妙。お茶、美味しい。と、当たり前のような感想が口からこぼれるかもしれない。

    ベースとなっている八女の煎茶もストレートでいただけるので、こちらもおすすめだ。「日本茶ってこんな味がするの!?」と驚くような旨味が味わえる。

    自然のゆらぎを感じさせるようなほうじ茶のブレンド

    ブレンドティー「CLOUDY」(¥715 税込)

    こちらは、京都産のほうじ茶ベースのブレンドティーで、その名も「CLOUDY」。煎茶の「CLEAR」とは対照的な名前だが、味わいもしかり。ブレンドされた藍の葉の香りと思われる草のようなニュアンスと、ほうじ茶の香ばしさが合わさって、木のぬくもりを感じるような香りに。アッパーではなくダウナーな、ふぅ〜っと息をつきたくなるような香りが立つ。さらに日本固有の柑橘である橘(タチバナ)が味をやさしく引き締めてくれ、飲み終わりはとてもリフレッシング。

    草木や果実を思わせるブレンドは、自然に囲まれて気持ちいいゆらぎの中で癒しを得るような感覚に近いかもしれない。そう考えると、流山という土地によく似合う。

    [寺田園]では、お店が淹れてくれる一煎目を楽しんだ後、自分でお湯を注ぎなおして二煎、三煎といただくことができる。「CLOUDY」の特徴的な香りは二煎目でもたしかに立ちながら、少し軽めの飲み口に。時間をかけてお茶の奥行きを感じることができるのも、ゆっくりと時間が流れるこの場所ならでは。

    まるで料理のように豊かに香る紅茶のブレンド

    ブレンドティー「AROMATIC」(¥715 税込)

    3つ目のブレンドは、宮崎県産の紅茶をベースにした「AROMATIC」というお茶。紅茶らしい色の濃さに少し黄金色が差した感じのお茶からは、その名の通り驚くような香りが。一口飲めば、黒文字のスパイシーさとカモミールの青リンゴのような果実感が、まるで料理を食べているかのような風味で口内を満たしてくれる。

    まだ温かい急須の蓋を開けて、茶葉から直接その香りを感じてみたくなるような、日本茶のアロマティックな一面を知ることができる一杯(もちろん、三煎楽しめる)。

    罪悪感なくぺろりしてしまうシフォンケーキとシュークリーム

    [寺田園]に行ったら、ぜひお菓子も試してみてほしい。シフォンケーキとシュークリームはどちらもみりんが使われていて、その分砂糖はごくわずか。いわく「罪悪感なく食べられる」スイーツに仕上がっている。白みりん発祥の地である流山の歴史も感じさせる、[葉茶屋 寺田園]のオリジナルスイーツを実際にいただいた。

    「流山みりん米粉豆乳シフォンケーキ」(¥550 税込)

    米粉と豆乳を使ったシフォンケーキは軽くて歯切れのよい生地に仕上がっていて、ふだんはケーキを食べないという方にもおすすめできそう。粒あんとクリーム、季節のジャムを自由に合わせていただくと、あっという間に完食してしまうほど。

    「流山みりんのパイ生地シュークリーム」(¥682 税込)

    パイ生地のようなシューで、こちらも軽い食べ心地。みりんが隠し味のカスタードクリームのおかげか、お茶との相性もよい。こちらも季節の果物が添えられていて嬉しい。果物と一緒に脇に添えられる黒い豆は塩エンドウで、これだけでもお茶が進む。

    スイーツ以外にもランチ膳(数量限定)がスタートしたり、今後もメニューは広がっていく予定とのこと。ご紹介したオリジナルブレンドティーの他、煎茶、ほうじ茶、紅茶は茶葉で販売されていてお土産としても人気。またシフォンケーキ、シュークリームなどテイクアウトメニューも揃っており、さまざまなシーンで立ち寄れる街道沿いのお茶屋として親しまれていきそうだ。

    後編では、古くて新しいお茶屋が生まれた経緯や背景、そして歴史ある流山本町で期待されるお茶屋の役割について掘り下げてみる。

    葉茶屋 寺田園|HA-CHA-YA TERADAEN
    千葉県流山市、江戸川近くの街道沿いに1889年から建つ寺田園旧店舗を改装して、今年8月にオープンした日本茶カフェ。明治時代に建てられた建物は国登録有形文化財に指定される。店内では、オリジナルブレンドを含む日本茶、この地に歴史が深いみりんが隠し味のシフォンケーキやシュークリームなどの菓子のほか、ランチ膳などを楽しめる。
    千葉県流山市流山2-101-1
    10:00〜18:00(17:30 LO)
    月曜定休 ※年内は27日まで、年始は1月1日から特別メニューで営業(詳しい営業予定は公式インスタグラムをご確認ください)
    instagram.com/hachaya_teradaen

    Photo by Tameki Oshiro
    Text by Yoshiki Tatezaki

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