• 流山[葉茶屋 寺田園]<後編> お茶を介して歴史を今に紡ぎ、街を甦らせる存在

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    流山[葉茶屋 寺田園]<前編> 歴史的建築の新しいお茶屋で、リフレッシングな日本茶と甘味を

    旧街道沿いのリノベーション茶屋 古い茶屋をリノベーションした[葉茶屋 寺田園]を訪れるため、千葉・流山に来ている。 流山市は、都心から車で1時間ほどの距離で、江戸川を挟んで埼玉県と隣り合う千葉県北西部の街。2005年のつ…

    2022.12.16 INTERVIEW日本茶、再発見

    千葉・流山の[葉茶屋 寺田園]で、お茶とスイーツをいただく。都心から車で1時間足らずの距離にあるレトロな街並み。そこに佇む明治時代の建物をリノベーションした[寺田園]に入ると、遠くに来たような非日常感がある。それでも敷居の高さはなく、「ゆっくり落ち着けそう」と、気が休まる感じもする。この空間の落ち着きというか、無理がない感じは何だろう?

    「元々ここはお茶屋さんだったんです」と話すのは、[寺田園]のリノベーションプロジェクトを率いた同店オーナーの門脇伊知郎さん。聞けば、当時は茶葉や乾物を売る街のお茶屋だったとのことで、現在のようなカフェスタイルではなかったものの、きっと毎日お茶の香りが充満してお客さんがそれを求めてくる、そんなお店だったよう。

    1960年代前半まででお茶屋としての役割を終えていたが、1889年築の建物は国指定有形文化財にも指定され、街のレガシーとして引き継ぐべき存在。それをどのように活用すべきかを考えたとき、「お茶の香りをかぐことでこの古い家がまた元気になるのでは」と、新しいお茶屋を目指すことに決めた。

    かつてのお茶屋ができたのは江戸から明治に時代が移って21年経ったころ。当時と同じ場所同じ建物でお茶屋を甦らせるには、流山という土地の歴史を意識することが不可欠だった。紆余曲折ある流山の歴史は「水運」がキーワード。[寺田園]のすぐそばには江戸川が流れるが、それは当時の物流拠点だった。

    大消費地である江戸と川で繋がっていた流山は水運で栄え、江戸中期には「白みりん」がこの地で開発され江戸をはじめ全国で人気になった。今も多くの家庭で使われる調味料のみりん発祥の地が流山というわけだ。

    江戸後期から明治においても物資輸送ルートとして流山は重要地点だった。流山の北部に造られた利根運河によって、北海道・東北からの大量物資が従来よりも安全で早く江戸(東京)に届けられるようになった。この利根運河の着工が1888年だから、旧寺田園茶舗が建った前年ということになる。

    賑わう街の中でお茶を売っていた、そんな記憶が[寺田園]の建物に宿っていると考えるのも的外れではないだろう。

    水運で栄えた流山は、時代が移り鉄道や自動車の陸運が発展すると、都市開発的には取り残された感が否めない。ただ、そのおかげで江戸明治の歴史的な建物や風情が残ったというのは少し大袈裟に言えば運命だったのかもしれない。

    建物2階部分とそこからせりだした瓦屋根。外観はほぼ昔のまま
    柱や壁にも昔の造りが残っている。鉄筋コンクリートならぬ竹筋コンクリートの竹の部分が覗く壁。建物が経てきた長い年月を感じさせる

    しかしながら、古めかしいばかりではない。リノベーションされた店内には、お茶を淹れるカウンターを中央に、ほどよい距離感でテーブルが用意されている。“古民家”であることに違いはないけれど、現代の私たちにも違和感なくスタイリッシュ。“カフェ”であることにも違いはないけれど、新築には醸せない年輪のようなものがある。よくよく考えてみると、そんなバランスがこのお店の一番の特徴ではないかと思う。

    前編でご紹介した3種類のオリジナルブレンドティー([櫻井焙茶研究所]の監修)にも、まさに正統派なお茶と新鮮な発想のバランスが表れている。

    「CLEAR」(リーフ販売 ¥1,426/店内 ¥715 税込)
    スペアミントとレモン果皮の爽快な香りが、旨味の強い八女の煎茶を一層飲みやすくそれでいて幅のある味に引き上げる
    「CLOUDY」(リーフ販売 ¥1,426/店内 ¥715 税込)
    紺色に見えるのは藍の葉で植物らしい香りをお茶にまとわせる。橘の果皮がほうじ茶の香ばしさに酸の軽やかさを加え、リフレッシュさせてくれる
    「AROMATIC」(リーフ販売 ¥1,426/店内 ¥715 税込)
    宮崎県産の紅茶に、黒文字の葉、カモミールがブレンドされエキゾチックな香り。リーフの香り、淹れたお茶の香り、急須に残った香りとすべて確かめたくなる

    旧寺田園茶舗だった時代を知る地元の人には、今新たに茶屋として開いたことを喜ぶ人が多いという。「お茶の香りがこの家を元気にする」という願いは、実はこの建物の周りにまで波及するのかもしれない。「この旧街道エリア全体を盛り上げるモデルになれたらさらに嬉しい」と門脇さんが話す通り、流山本町にはまだまだ生まれ変わる余地が残っている。かつて流山が栄えた時代に旧寺田園茶舗ができたように、この街が再び盛り上がりを見せるときには、今の[葉茶屋 寺田園]が多くの人に親しまれているようにと、そんな期待も込められている。お茶を介してその街や人の歴史を体感させてくれる[寺田園]は、きっとこれからも流山の文化を川の流れのように継いでいってくれるはずだ。

    葉茶屋 寺田園|HA-CHA-YA TERADAEN
    千葉県流山市、江戸川近くの街道沿いに1889年から建つ寺田園旧店舗を改装して、今年8月にオープンした日本茶カフェ。明治時代に建てられた建物は国登録有形文化財に指定される。店内では、オリジナルブレンドを含む日本茶、この地に歴史が深いみりんが隠し味のシフォンケーキやシュークリームなどの菓子のほか、ランチ膳などを楽しめる。
    千葉県流山市流山2-101-1
    10:00〜18:00(17:30 LO)
    月曜定休 ※年内は27日まで、年始は1月1日から特別メニューで営業(詳しい営業予定は公式インスタグラムをご確認ください)
    instagram.com/hachaya_teradaen

    Photo by Tameki Oshiro
    Text by Yoshiki Tatezaki

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