• Ocha ニューウェイヴフェス 2021
    淹れ手たちの今とこれから

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    5月15・16日に渋谷で行われた「Ocha ニューウェイヴフェス」では、2021年の新茶を祝うべく、6店の茶屋・日本茶ブランドがそれぞれのセレクトしたお茶を来場者一人ひとりの目の前で淹れた。横並びのカウンターに立ち、同志がお茶を淹れる姿を横目に見ながら、どんなことを感じながらその時間を過ごしたのか。また、それからの活動について最新の動向を聞いた。

    [Satén japanese tea]の小山和裕さんは、イベントにきたお客のリアクションを次のように振り返ってくれた。

    「来ていただいた方からは『今までにないようなイベントで、コーヒーフェスのような雰囲気があった』と感想をもらいました。[Satén]のお客様とはまた違う客層や、通常のお茶イベントではお会いしないような方達が来られていました。その中で、[Satén]のことを知っていただいていたのはとても嬉しい収穫でした!」

    当日はコーヒードリッパーのような器具でお茶を淹れてくれた小山さん。これは[Satén]が共同開発した「ORIGAMI ティードリッパー」という日本茶専用のドリッパーで、「[Satén]では今後、ORIGAMIのティードリッパーをはじめ、さまざまな淹れ方を提案しつつ、日本茶を愉しむ環境を作っていきたいですね!」と小山さんは語る。

    「僕らは日常に溶け込む日本茶を提供しつつ、“Leaf to Relief — 茶葉から一服へ —”をお客様に伝えているので、また次回もそれらを伝えられるような日本茶をご提供したいです」と次に向けての意気込みも聞かせてくれた。

    Satén japanese tea
    東京都杉並区松庵3-25-9
    saten.jp
    instagram.com/saten_jp

    [norm]からは主宰の長谷川愛さんに加えて、ゲストバーテンダーとしてキャメロンさんが参加してくれた。これまで小規模の茶会がメインだったため、2日に渡って多くの人々にお茶を出すという経験はとても刺激になったと話す。

    「Ocha New Wave Fes. に出させてもらって、たくさんのお客さんにお茶を出すのが久しぶりで、すごく楽しかったです。あれを機に、自分も人が集まれる場所を作れたらいいなぁってすごく思いました」

    各地の生産者をめぐることが一番楽しいと話す長谷川さん。イベント以降も生産者に会って、これからの日本茶について考える日々を過ごしている。

    「今年もコロナの影響でお手伝いに来る人が少なかったり、雨が長かったりで、農家さんは大変そうでした。でも、独立して自分のお茶を売り始めたり、楽しそうにやっている農家さんもいて、そういう方達を見るとワクワクする。今はもう番茶の季節ですけど、農家さんともよく話すのが(新茶と比べた)二番茶以降の価格の低下。個人的には二番茶とか三番茶で、烏龍茶や紅茶も作れば日本茶がいろんな角度で評価されて、お茶づくりの幅も広がるんじゃないかなって思っています」

    norm
    normtea.com
    instagram.com/norm.tea

    [a drop . kuramae]のべったなさんも、イベント以降も生産者との親交をさらに深めている。

    「イベントで出した番茶を作っている滋賀の政所町に行ったっすね。[杠葉屋]っていうお茶屋さんで、そこの娘さんが当日来てくれたんですけど、お客さんのリアクションも生で見てくれていて、色々とお話できましたね」

    「もう一つイベントで出した、[しばきり園]の忠士くんにもすぐメールしたっすね。イベントってけっこう緊張する中で、自信を持ってこのお茶なら間違いないっていうか、これでわからなかったらしょうがないって思える、心強いお茶でだったって御礼を伝えたら、彼もすごく喜んでくれて。今度は彼を蔵前に招いてのお茶会を計画しているので、それもめちゃめちゃ楽しみですね」

    11月にはオープン1周年を控え、アニバーサリーイベントのアイデアを温めたり、器作家をフィーチャーしての個展も開始するなど、お店のコンテンツも着々と広がっているようだ。

    a drop . kuramae
    東京都台東区蔵前4-14-11 ウグイスビル204
    instagram.com/adrop_kuramae

    [SA THÉ SA THÉ]のカイノユウさんは、イベント後に[a drop . kuramae]を訪れたそうで、今回のイベントでのつながりを大切にしたいと話す。

    「横のつながりというか、そういうのは大事にしたいなと思っていて。私が『ふつうのお茶をどう飲んでもらえるかっていうことを一番やりたい』という話を事前のインタビューでも話していたのですが、それにべったなさんがすごく共感してくれて。同じお茶をやっている人にそう言ってもらえたことが、すごく励みになりましたし、刺激になりましたね」

    お菓子作家とのコラボや水出しの新茶バージョンなど、最近新しい商品を発表している[SA THÉ SA THÉ]ですが、カイノさんが目指したいのは「茶葉を飲んでもらうこと」だと話す。

    「やっぱり、急須で茶葉を飲むということをもっとやってもらえるようなアイデアを考えたいなと思います。ただ、それだけで頭でっかちになるのは面白くないし、色々な方から一緒にコラボしようとお声がけいただくこともあるので、そういった楽しみ方を広げることもやりたいです。柔軟に考えつつも、軸はぶれずに、お茶を急須で日常的に飲んでもらうっていうことをやってもらいたいと思っています」

    SA THÉ SA THÉ
    shop.sathesathe.com
    instagram.com/sathe_sathe_official

    [TEA BUCKS]でも、急須で淹れる体験というのを最近スタートさせたそう。

    「ホットに関して三煎まで飲み比べができるというメニューを追加しました。味や香りの変化を楽しんでいただくということがひとつと、体験型、つまり二~三煎目はお客さんご自身でお湯を入れてお茶を淹れて飲んでいただくという体感をメニューの中に入れました」

    最近は店舗内装も大幅にリニューアル、モーニングも始め、さらに幅広い客層にお茶を浸透させている。

    「干物定食をモーニングで出しています。干物は真鶴港、味噌汁の味噌は愛知県の蔵元、お米は山形の農家さんから買わせていただいています。お茶と同じく、基本的には直接農家さんから買わせていただくものがほとんどです」

    またイベント以降、お客さんのお茶との付き合い方の変化に気づくことがあったそう。

    「イベントには[TEA BUCKS]のお客さんもたくさん来てくれていました。そしてその後、別のお茶屋さんに行きましたとか、また違うお茶屋さんを調べて行ったとか、地方に行った時にお茶をお土産に買ってきてくれたりとか。今まで“飲むだけ”だった楽しみ方が変わったのかなと感じます。イベントを通じてもっとお茶を知ってもらえたというのが嬉しかったですね」

    TEA BUCKS
    東京都渋谷区恵比寿西2-12-14
    teabucks.jp
    instagram.com/tea_bucks

    会場となった[JINNAN HOUSE]をホームとする[茶空 SAKUU]の佐藤奈緒美さんは「若い人たちがお茶を飲んで楽しいって感じてらえたのが単純に嬉しかったですね」と振り返る。

    奈緒美さんは一人ひとり丁寧に三煎まで淹れ、茶葉まで食べるというサービスをしていたのが印象的だった。

    「やっぱり新茶なので、一煎だけではもったいないと思って。むしろ食べてもらって『茶葉に栄養があるんだよ』って説明をしてあげることで、また一つ踏み込んだ情報を得てもらえたらいいかなって」

    お店でも最近はお茶をしっかり楽しむ人が増えてきていると実感するのだそう。夏に向けて、お茶をフルに楽しんでもらうメニューの用意も万端のようだ。

    「これから暑い季節なので、お茶を使ったかき氷『茶氷山』を出し始めます。『茶葉寒天』も始めますし、もっとお茶に特化したものどんどんやっていきたいと思いますね。『お茶を食べる』というテーマはずっと続けていきたいなと思います」

    茶空 SAKUU
    東京都渋谷区神南1-2-5 JINNAN HOUSE 1F
    instagram.com/jinnan.house/

    会場でディスプレイされたお茶の葉と氷

    六者六様、それぞれに個性があるから響き合い、心地よい一体感が生まれたOcha New Wave Fes.。初開催は無事に終了し、各店からは次回への期待が異口同音に聞かれた。それぞれの活動に注目しながら、また会う日を心待ちにしていよう。

    Photo: Taro Oota
    Text: Yoshiki Tatezaki

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