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2021.04.30

オンライン書店が
お店を構えて茶葉を
販売することの価値 
CHAIRO 中村和義さん
<後編>

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中国ではお茶のことを緑茶、青茶、紅茶、白茶、黄茶、黒茶と6つの名前で呼び分けることをご存知だろうか。どれも茶の木の葉からつくられるという点では同じであるのに、収穫後の工程の違いによって、表情豊かな色合いを見せるお茶。後編では、[CHAIRO]のお店にて中心メンバーである中村和義さんに8種類ものお茶を淹れていただき、お茶の色、味、香りを比べながらお話を伺った。

好きなお茶に出会い、生まれる「お茶って美味しいね」

ブックカフェ[本屋未満]から上田城を横目に車で10分弱。[CHAIRO]のお店に着くなり、和義さんはお茶を淹れる準備に取り掛かった。前編にも登場した龍鳳峡高山茶や、長野県天龍村のやっさのお茶をはじめ、日本、台湾、中国のお茶を飲み比べさせていただける贅沢な機会に心が踊る。

「[CHAIRO]はテイスティングルーム的な感じで、茶葉の販売をメインにやっています。茶葉にフォーカスを当てることで、その価値を高められるんじゃないかというのもありまして。そもそもお茶を体験できる場所がないとお茶を飲む行為も生まれませんし、『お茶って美味しいね』の入口になればと思っているので。ドリンクはもっとライトな入口として、このお店とは別にカフェとかで提供しようともともと考えていて、今はそれが[本屋未満]の方でやれています」

瀟洒な店内は洗練された雰囲気を醸しているが、決して敷居が高いわけではない。むしろ居心地は良い。お客さんには若い年代の方も多く、インスタグラムで写真を見てふらっと来る方もいるそうだ。「ふだんはコーヒーを好んで飲む方や急須を持っていない方にもひと通り飲んでいただいて、自分の好きなお茶を探してもらっています」。そしてなにより和義さんによるお茶の紹介はとても丁寧で親身。ご自身もお茶を楽しんでいることがその語り口に如実に現れている。

「高山茶って見た目は緑茶じゃないですか。でもこれ、烏龍茶の一種なんですよ。飲んでみると、緑茶とは違う華やかな香りがありますし。烏龍茶って日本だと黒いイメージがあると思いますが、緑茶や紅茶に近い色のものもあって、この幅の広さが面白い。うちで扱っている凍頂烏龍茶とも色が違うのは、発酵と焙煎の度合いによって変わるからなんです。凍頂は焙煎がすこし強いので……香ばしくないですか?」

ときに自分では言葉にするのが難しいものも、お話を伺いながら目の前で淹れてもらうことで、スッと入ってくるから不思議だ。ただ、和義さんはお茶に対する感じ方をあまり言語化はしたくないという。「受け取り方はみなさん違いますからね。それに、僕自身もお客さんが見せる反応や感覚を面白く思いながらやっていますので」。そういうわけで、[CHAIRO]では数あるお茶のなかからお客さんが自分にしっくりくるお茶に出会えるよう、全種類飲める機会を提供している。今いただいた凍頂烏龍茶も美味しい。

手前から、やっさのお茶、凍頂烏龍茶、雲南古樹紅茶。凍頂烏龍茶は梅酒で割っても美味しいらしい。こうして並ぶと、お茶の色の豊かさを実感できる

生活に根付くお茶、感じた敬意

同じサッカーチームでプレーしていた大樹さんに誘われ、バリューブックスで働くことになった和義さん。大樹さんと同じく、もともとお茶好きなわけではなく、[CHAIRO]に携わるようになってからいろいろと飲むように。すると次第にお客さんに近い感覚で面白いと思えるようになったという。引き続き、お茶のお話に戻る。

「雲南古樹紅茶は中国・雲南省のミャンマー寄りの地域のもので、その一帯で自然栽培されている樹齢数百年の老木からつくられます。無農薬で、無肥料。ダージリンだと一定時間超えると渋くなるんですけど、そういうのがあまりなくて甘みもある。水筒に茶葉詰めて会社とかでお湯を足しながら飲めるので楽ですよ。あと、プーアル茶と割るとめちゃくちゃ美味しいです」

「『お茶って美味しいね』って言ってくれたらいいなって」とお茶愛を滲ませて話す中村和義さん

お茶をお茶で割る。その発想も楽しい。他にも雲南古樹白茶、プーアル生茶、プーアル熟茶と盛り上がったのだが、それらの話は実際にお店に訪れたときに聞いていただきたい。そんなお茶話が止まらない和義さんは、お茶の勉強のために行った台湾であることを感じたのだと言う。

「台湾の街には茶葉を扱うお店がとても多いんですよ。気軽にお茶を飲める環境が整っていて、お茶を淹れる文化もしっかりと根付いている。幅広い年齢層の方の生活に溶け込んでいる様子を見ると、自国のお茶や茶葉に対してリスペクトを持っているんだなと感じました。日本も良いお茶、たくさんあるんですけどね」

京都の陶芸家・清水善行さんによる茶器と童仙房在来ほうじ茶

浅蒸しの煎茶であるやっさのお茶ともうひとつ、[CHAIRO]で取り扱いのある日本のお茶が童仙房在来ほうじ茶だ。[CHAIRO]を支えるメンバーのひとりである料理研究家・宮本しばにさんの紹介で繋がった縁なのだが、面白いことにその仕入先は京都の陶芸家である清水善行さんからだという。どうやら清水さんが京都の童仙房地域の茶農家から茶葉を買い取り、ご自身で手焙煎しているらしい。

「実生の木からできている在来のお茶で、在来種がどんどん減っているといわれるなか、清水さんが『個性があって美味しい』と。品種改良してつくったほうが生産効率は上がるし、質と量ともに安定はするんですけど、『在来種特有の深い香りを全国の人に味わってもらってこのお茶の良さを伝えていきたい』と聞いて。清水さん自身が飲み続けたいこともあるみたいですが(笑)。数も少ないので、分けていただいている感覚ですね」

……美味しい。取材陣一同、自然と声が漏れる。加えて、[CHAIRO]のお茶への探究心が、海外だけでなく日本のお茶にも向けられていることをしっかりと感じ取れたのが嬉しく思えた。

こうしてすべてのお茶を飲み終えると、至福のひと時への名残惜しさもあったが、自宅で自分でもお茶を淹れたくなったのでお気に入りの茶葉を2種類買った(カメラマンと編集者は清水さんの急須の虜になっていた)。気付けば、窓の外には夕焼けに照らされた雲が流れている。すっかり長居してしまった。外に出ると、4月とはいえ標高500mの空気はまだ肌寒かったが、お茶で温められた体にはちょうど気持ちが良かった。

中村和義|Kazuyoshi Nakamura
1984年生まれ。長野県出身。サッカーのチームメイトであった大樹さんに誘われ、バリューブックスに入社。現在は、2019年6月に社内で立ち上がった「CHAIRO」の中心メンバーとして、奥深きお茶の世界のことを勉強しながら、お茶のある生活の楽しさを伝えるために日々奮闘中。
chairo.jp
instagram.com/chairo_store_ueda
instagram.com/honya_miman
valuebooks.jp

Photo: Yuri Nanasaki
Interview & Text: Yoshinori Araki
Edit: Yoshiki Tatezaki

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