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2020.08.21

NODOKA 洪秀日さん
「食べる」パウダーティーと
お茶の飲み方の多様性
<前編>

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粉末茶のブランド「NODOKA」は、“本物の日本茶を海外に伝えたい”という洪秀日ホン スイルさんの想いから、ニューヨークで誕生した。現代のライフスタイルにフィットするお茶の魅力と楽しみ方を世界中に広めていきたいという考えから「オーガニック」と「パウダー」をキーワードに据える。使用する茶葉は自然栽培のもので、農薬や化学肥料は一切使用していない。30年以上の歴史を持つ茶農家が、静岡県の自然豊かな山間部で丹精込めて栽培したものだ。

多様なライフスタイルに寄り添う、新たなお茶の選択肢

柔らかな雰囲気の洪さんに「NODOKA」始動のストーリーを尋ねてみる。言葉を大切に訥々と話してくださる様子から、お茶と生産者への真摯な想いが垣間見える。

NODOKAの創業代表・洪秀日さん

「NODOKAの茶葉は、すべて、静岡の春野町の農家さんから仕入れています。2012年ごろに全国の産地を巡って出会いました。情報が無い中で各地に足を運び、地元の方々の口コミのおかげで巡ることが出来たんです。この作り手さんは、オーガニックという言葉がまだ世間に馴染んでいない30年以上前から、一貫して有機栽培を続けてきた方。有機で茶葉を育てるのはとても難しく、多量の収穫が見込みにくいにも関わらず、哲学を持って土壌づくりに取り組んでいらっしゃった。今でも、有機JAS認定を受けている茶葉は全体の3%程度。それだけ苦労のあることですし、誰もがアクセスできるようにはなっていませんね。でも、なによりもその日、農園で淹れていただいた一杯が本当に美味しかったんです」

前職では、日本のプロダクトやカルチャーを広めるためにニューヨークで勤務していた。現地では、お茶といえば一言目には「オーガニック?」と尋ねられたそう。それがたとえ一種のトレンドだとしても、本物を知ってもらう間口を広げられたらいい、と洪さんは一歩先を見越していた。

お茶を広める道に進むことになった決め手を尋ねると、その理由は、洪さんの中で二つの問題意識が交差したところにあった。

「まず、ニューヨークでは急須でお茶を淹れて提供することがパフォーマンスで終わりかねないということを感じていました。その場では楽しんでいただけても、多様な人種のお客様が自宅でお茶を飲むことにはなかなか至らないもの。そこで、何か別の在り方を探りたいと思っていたんです。そんな時に、もう一つ大きなきっかけになったのが日本での農家巡り。ブルックリンの抹茶の盛り上がりを踏まえて期待感を胸に農家さんに会いに行きましたが、そのブームは日本の作り手には届いていないことの方が多かった。作り手の高齢化や、有機栽培の難しさも耳にしましたね」

飲み手と作り手の間にギャップがあり、それを繋ぐ役割が必要だと感じたそうだ。

「素晴らしい生産者が作った日本のお茶を、しっかりと伝えるのが自分の使命だと感じたんです。そこで行き着いたのが“オーガニック”で“パウダー”という答えでした」

お茶の種類は、ほうじ茶、煎茶、玄米茶、抹茶、特選煎茶の5種。すべて微細なパウダー状で、水やお湯に溶かして手軽に飲むことができるほか、スイーツや料理にも活用できる

リーフからお茶を抽出すると、栄養分の約70%は茶がらに残るといわれる。つまり、普段飲んでいるお茶には栄養分が30%しか出てきていない。一方で、茶葉を丸ごと粉にしたパウダーは手軽なだけではなく、お茶の栄養分を余すことなくいただくことができる。

「石臼で挽くのではなく、空気圧で粉砕してパウダーにしています。お茶本来の香りが立ち、すぐに溶けやすく、栄養素を失わないバランスを考え試行錯誤して、製法にはこだわりました。料理に使っていただいたり水に溶かして簡単に飲んでいただける30杯分のパックタイプと、携帯したりホテルやコワーキングスペースにも置ける1杯分のスティックタイプを用意しています。まるごとお茶を摂り入れられるので『食べられるお茶』とも呼んでいます」

有名フレンチレストランでも採用されるほか、日常の様々なシーンで手軽に使え、なにより本当にお茶を味わい尽くせる。これは確かに、新しい。

「お茶は今まで、『どうやって飲むか』ばかりが発展してきました。僕は、お茶がもともとは薬草だった原点に立ち返って新しいものを作りたかった。実のところ、やはり急須で淹れたお茶の方が旨みはしっかり出ますし、蓋を開ければすぐ飲めるペットボトルやパックはすごく便利です。それでも、その“中間”がポッカリ抜けているような現状がありますよね。コーヒーカルチャーが盛り上がっているように、お茶にももっと選択肢があっていいし、もっと多様性を生みたいと思ったんです」

そう話す洪さんも、そもそも大のお茶好き。NODOKAで使用する農家さんの今年の新茶を急須で淹れていただいた。

「家ではこうして飲みますよ。今日持ってきたのは同じ農家さんの新茶です。今年の3月は寒くなったため収量は多くなかったのですが、その分、一枚の葉が大きく栄養素の詰まったお茶になりました」

今年は緊急事態宣言の影響もあり、思うように茶畑に行くことができなかったそうだが、お茶づくりの大変さにはいつも思いを馳せるという。

「お茶づくりは重労働で、草むしりや土壌づくりが一年の大半。茶摘みの時期なんて一ヶ月も無いんです。お茶を広める立場として、そんなバックボーンを大切に、うまく伝えながら多くの方に楽しんでいただける形を作っていけたら嬉しいですね。日本文化ということだけに捉われず、今までお茶を飲んでこなかった人に向けて発信していきたいです」

新しいお茶の選択肢を目指しながらも、作り手と飲み手のつながりもしっかりと大切にする洪さん。後編では、NODOKAのパウダーティーを使ったノンアルコールカクテルのレシピを教えていただいた。暑い日に飲みたくなるようなレシピなので、ぜひお試しを!

洪秀日|Suil Hong
1985年、東京都生まれ。Japan Expo日本支社に入社し、日本企業の海外進出支援や人的交流の促進のためのイベントの企画・運営に携わる。東日本大震災後、NPO法人 PLAY FOR JAPANスタッフとして活動。2013年より拠点をニューヨークに移す。2016年、オーガニックパウダーティーブランド「NODOKA」を立ち上げる。
nodokatea.com
instagram.com/nodoka_tea

Photo: Junko Yoda (Jp Co., Ltd.)
Text: Takako Nagai
Edit: Yoshiki Tatezaki

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