• 文化の融合が拓くお茶の新しい文明開花
    京都[playtea]<後編>

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    「ここは自分と向き合う場所」 グローバルにお茶の愉しみ方を提案するブランドが開いた新天地 [POUYUENJI KYOTO]<前編>

    京都は八坂神社と清水寺の中間あたり。二寧坂、産寧坂といった観光名所には、この日も京都らしい歴史を感じる街並みを楽しむ人々が多い。京都駅からはバスで15分ほど、八坂通りの石段を登り、周囲の町屋や金剛寺などの名所を通り過ぎる…

    2025.08.22 INTERVIEW

    世界中のお茶をキュレートする台湾発のグローバルティーカンパニーPOUYUENJIが海外進出へ。その一歩目に選ばれたのが、ここ京都・八坂の地で2024年に開いた[POUYUENJI KYOTO]だった。

    前編では、日本庭園を望む美しいティールームで厳選された茶葉のテイスティングコースをじっくりと味わった。そのすぐ隣の[playtea]は2025年4月にオープン。コース仕立ての[POUYUENJI KYOTO]とは趣向を変えたティースタンドでオリジナルドリンクの数々がいただける。

    八坂通りから産寧坂に向かう手前、石畳の坂に間口を開く。右隣は[POUYUENJI KYOTO]
    カウンターでオーダーすれば、つくりたてのドリンクを気軽に味わえる。茶葉、お菓子などのお土産も購入可能 

    「[playtea]は、プーアル茶のほか厳選した日本茶をベースにしたアレンジティーを提案しています。カジュアルに、より気軽にお茶を楽しめる場所です。八坂を観光中に、『ちょっと涼みたい』『喉が乾いたな』、そんなときにふらっと寄ってもらえればと思います。[playtea]の名の通り、お茶を楽しんでほしいんです」

    POUYUENJIチームがそう口を揃える通り、[playtea]のメニューはバラエティ豊かで見ているだけでワクワクする。京都限定のオリジナルドリンクをはじめ、フルーツティーやフローズンティー、生プーアルのマサラチャイ、熟プーアルのミルクティー、抹茶ラテなどフルーツやミルクを合わせたドリンクと、ストレートティーまであって全20種類。どれもおいしそうで迷ってしまうが、迷うことも含めて楽しめるお茶のひととき。

    急須などは用いず、ドリッパーでお茶を淹れる。カフェやバーのような設えだが、お茶ならではの動作が面白いミックス感を醸し出している

    あまりにも決めきれないときはスタッフに相談してみるのも手だ。お茶の産地や淹れ方といった知識や実技の腕を試される難易度の高い課題をクリアした「POUYUENJI  tea master」が、それぞれのドリンクの特徴を教えてくれる。自分の好みを伝えて一緒に選ぶのも楽しい。「味の好みでもいいですし、メニューに載っている写真を見て、見た目で決めてもいいんですよ」と優しく教えてくれた。

    メニューが決まったら、あとは待つだけだ。さまざまな国で楽しまれるお茶が好きで集まったというスタッフ陣の所作は美しく、自分の頼んだドリンクが目の前で仕上げられていく様子を眺められるのもポイント。

    「ここで使っている茶葉は[POUYUENJI KYOTO]がセレクトしたもので、先ほど飲んでいただいた通り、品質とおいしさはお墨付きです。難しかったのが京都限定のドリンクで、私たちが持っているお茶とどんな食材を組み合わせて、どのように飲んでもらえばよいのか、とても悩みました。レシピが完成するまでに2年かかったんです。 試作を繰り返した京都限定のドリンクは自信作なので、ぜひ飲んでください」

    そう話すtea masterが淹れてくれたのが、金達摩ジンダモ生プーアル茶を使用した「京七味 & マンゴー パッションティー」だ。味わいを紐解くと、生プーアルのフレッシュな爽やかさに果実感がプラスされ、ゴクゴク飲みやすいさっぱりとした口当たり。マンゴーのみずみずしさも相まって、暑い夏に火照った身体が生き返るようだ。そこに七味のスパイス香がぴりっとしたアクセントになる。

    「京七味 & マンゴー パッションティー」。弾ける香りを楽しんでもらうため、蓋をせずに渡してくれる

    「私たちPOUYUENJIのテーマの一つに『融合』があります。世界中のおいしいお茶をキュレートしてきたブランドが実店舗を構えてやりたいことは、その土地のものを取り入れてお茶の文化と融合させ、新たな形を生み出していくこと。京七味がいい例です。私たちだからこそ提供できる貴重な生プーアルに、京都らしい七味を掛け合わせて、新しいドリンクをつくりました。たとえお茶に明るくない人でも、まずはおいしく飲んでもらうことから茶文化に興味を持つきっかけになれたら嬉しいです」

    その場で点てた抹茶でラテを

    続いてつくってもらったのが「和三盆 抹茶ラテ」。甘さ控えめの和三盆シロップに京都産の牛乳を注ぎ、点てたばかりの抹茶を注ぐ。「よく混ぜて飲むのがおすすめ」とのことで全体がうっすら抹茶色になるまでストローでかき混ぜて口に含むと、これまた驚いた。まず、やわらかな甘さに気持ちをほっとさせてくれる。しっかりとした抹茶の苦みと旨み、和三盆の上品な甘さとミルキーさとの絶妙なバランスで、それぞれの持ち味を生かしている。抹茶ラテは定番といえるほどに普及してきたが、これならお茶好きも唸るだろう。

    「京都の抹茶ラテといえばやはり王道ですから、どうすればここでしか飲めないドリンクに仕上げられるだろうと考えました。抹茶と相性がよい和三盆の自家製シロップを加えることで、抹茶本来の風味を生かしながら、最後までおいしく飲み切っていただける上品なラテになりました。海外からのゲストにも喜んでもらえる、一番人気のドリンクです」

    カップに貼られたクラフト感のあるシールは、使用する茶葉やフレーバーの色を表す

    ミルクを使わずさっぱりといただける、夏にぴったりのドリンクをもう一杯。「スモーキーレモンティーソーダ」は、京番茶と元紀熟プーアル茶を組み合わせた斬新さが光るドリンクだ。こちらも混ぜていただくと、甘みの奥にお茶の持つ複雑な風味が顔を出す。芳醇な香り、レモンの酸味と炭酸の刺激が合わさって、どこかクラフトコーラのような革新的な味わいだ。

    「元紀熟プーアルの力強い味わいを消さずに、それでいてさっぱりと飲みやすいドリンクに仕上げるために試行錯誤しました。そこで思いついたのが、京番茶です。京番茶を軸にすることで京都らしい味わいになるし、この独特のスモーキーさと熟プーアルの相性は抜群でした。これもまた、京都が育んできた歴史や文化との融合ですね」

    紅玉紅茶を使用し、ハーブ感がたまらない「レモン & ミント フローズンティー」。[playtea]で用いるシロップはすべて自家製だ

    「[playtea]が伝えたいメッセージは、“Life is a Good Play”です。お茶の世界に新しい遊び心を織り込みたい。そのアプローチとして、お茶と地元の食材を組み合わせて、文化の融合をお茶で表現します。そしてせっかく日本に出店したからこそ、抹茶、煎茶、和紅茶と、日本のお茶とより深く融合を図りたいと考えています。これまでブランドとしてさまざまな国のお茶をキュレートしてきたうえでブレない行動指針は、生産の現場に行って、見て、話して、信頼関係を築くことです。お互いを信頼できる関係性の作り手が手がけた日本茶を淹れたい」

    POUYUENJIの精神の根底にあるのはやはり、お茶のあるライフスタイルを実践する人口を増やしたいという願いだ。台湾でも若い世代のお茶離れが進んでいて、ゆっくりとお茶を飲む時間が失われつつあるという。ただお茶を飲むだけなら、コンビニや自動販売機に行けば事足りてしまう。流行りのバブルティーも身近な存在だ。他方で、お茶のある空間や時間をしっかり楽しもうとすると途端に敷居が高くなる。若い人が気軽に、上質なお茶の時間に触れられる「中間」の店がないのだ。

    「その中間をうめる意識で開いたのが[playtea]といえます。ここに寄った若いお客さまがその後もお茶をよく飲むようになってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。もちろん、お茶好きの方々の目的地にしてもらいたいですし、京都らしいお茶体験を求める観光客の方々に喜んでもらえるドリンクも揃えています。分け隔てなく、老若男女にお茶を楽しんでほしいという一心です」

    事実、取材中には20〜30代の若いお客様が来店する姿が見受けられた。若いカップルがそれぞれ異なるフレーバーのドリンクを注文して、途中交換しながらおいしそうに飲んでいる姿が微笑ましい。今後POUYUENJIはこの場所を起点として、遠く違う国でも地元の文化との融合をお茶で表現していくのだろう。そんな歴史の一歩目が、この京都から始まったのだ。

    POUYUENJIディレクターのナディア・チェンさん(左から2人目)とPOUYUENJI tea masterの皆さん

    playtea
    京都市東山区八坂通下河原東入八坂上町372
    12:00〜20:00
    月曜・火曜定休
    http://playtea.com
    IG @playtea.kyoto
    *営業時間は予告なく変更される場合がございますので、インスタグラムのプロフィールよりご確認ください。

    POUYUENJI KYOTO
    京都市東山区八坂通下河原東入八坂上町374
    10:00〜18:00
    月曜・火曜定休
    https://kyoto.pouyuenji.com
    IG @pouyuenji.kyoto

    Photo by Yu Inohara
    Text by Nanako Aoki
    Interview & Edit by Yoshiki Tatezaki

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