• 自分の「好き」にしたがって心動く日本茶を伝える二人
    FAR EAST TEA COMPANY 畠山大さん・藤井航太さん<後編>

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    自分が好きなものを他人に伝えたい。音楽でも映画でも、漫画でも小説でも、カレーでもラーメンでも、そういった動機はとても自然で、なおかつポジティブなものだ。FAR EAST TEA COMPANY(FETC)の畠山さんと藤井さんにとって、その伝えたいものは日本茶であり、それにまつわるストーリーだ。前編に引き続き、二人がリスペクトする「お茶のレジェンド」杉山彦三郎の話から再開しよう。

    朝ドラを作りたいくらい

    藤井航太さん

    藤井 杉山彦三郎さん、めちゃくちゃ熱い人なんですよ。当時は、品種っていう概念はそもそもなくて。全部、種から育てる「実生(みしょう)」だったんです。葉っぱの大きさも、色も、芽の出るタイミングも一本ずつ違う。結果、まばらなお茶になってしまい、品質が安定しない……。

    お茶のことについてこれほど勢いよく語る20代が東京に何人いるだろか。あまりに楽しそうに話すから、専門用語が頻出しても面白く聞けてしまうのだが、少し予備知識を補足しておくと、杉山彦三郎は1857〜1941年、江戸明治大正昭和を生きたお茶の研究家だ。茶の樹に関する科学的基礎知識というものはない時代、杉山彦三郎は茶の育ち方を観察し、良い樹を育て良い芽を摘むための実験、今でいう品種改良を世に先駆けて行なった。今、さまざまな種類のお茶が飲めるのは、この杉山彦三郎のおかげといえるのだ。

    藤井さんの言葉に戻そう。

    藤井 ……という時代に、彼は、芽が遅く出る樹と早く出る樹があるというところに気がつくんです。接木(つぎき)で繁殖させるということも彼が始めたといわれていて、さまざまな試行錯誤をして良い樹をつくろうとした。でも当時は、そんなこと必要とされていないんです。味はともかくお茶は売れていたし、わざわざ手間暇かけてそんなことをする必要ないとみんな思っていたおかげで、彼の研究には全く理解が得られなかった。いろんな茶畑に行っては這うようにして茶樹を見て回っていたから「イタチ」っていうあだ名で呼ばれていたり。各地から集めてきた茶樹の畑を焼かれたりだとか、全部抜かれたりもしたそうです。それでも彼は諦めずに不屈の努力を重ねて、やっと認められたのが「やぶきた」という品種だったんですね。それが全国的に超大ヒットしたわけですけど、それって彼の死後なんですよね……。一つの産業をガラっと変えて、今も支えつづけているのに、最期まで評価されなかった。お茶に人生をかけた偉人は歴史上に何人もいますけど、僕が一番好きなのは杉山彦三郎さんです。熱すぎる。僕、このストーリーで朝ドラ作れると思うんですよね。

    杉山彦三郎の情熱も熱ければ、藤井さんの愛も熱い。たしかに、日本の朝にお茶のドラマはぴったりな気がする。

    鹿児島のやぶきたを淹れてくれた畠山さんにつづいて、藤井さんが淹れてくれたのは、埼玉・狭山[横田園]の「おくはるか」だ。

    「お茶を楽しむことと道具を楽しむことはすごく近いこと。自分のために思いっきり気取ってお茶を淹れる方が、気分も上がるし、結局お茶って自分の時間を創るものだと思うので」と藤井さん。谷井直人さんの湯呑みに、ガラス茶器は小林裕之・希夫妻の作品。急須は無銘のものだが、「使っているうちに馴染んできて、最近はいつもこれを使っている」のだそう。

    現場に行かなければわからないこと

    藤井 このお茶は、CHAGOCOROでもインタビューされていた横田さんの「おくはるか」っていう品種です。横田さんって、すごく若いんですけど、面白いお茶をつくる方だと思っていて。「狭山のお茶ってどういうお茶なんだっけ」っていうことをご自身でよく考えられて作られていて。僕は、「この人とこの場所じゃないと作れないお茶だな」って思えるお茶がすごく好きなんですよ。
     狭山は産地特性が比較的薄いと思うのですが、彼は「萎凋いちょうという価値」を自分のお茶に見出して、その繊細な香りを飛ばさずに、できる限り残そうとしている。このおくはるかも、繊細で華やかな萎凋香がふわッと香るのが素敵なお茶です。そのためにすごく大事なのが乾燥機なんですけど、たまたま、先代が買われて倉庫に眠っていた機械がそれに使えた。その貴重な機械があることと、彼のお茶のコンセプトや香りに対するアプローチが合致したから実現したお茶だと思うんです。だから、彼にしか作れないお茶というか。なんかそういうのがすごく好きなんです。

    藤井 「僕らは現場主義だな」って自分たちでも思いますね。現地に行かないと得られない情報があるし、そもそもなんで美味しいのかって行ってみないとわからない。試飲して、旨味の量が多いなぁとか、こいう香りがするなみたいな感想だったのが、最近は一周回って「すごく素直なお茶だな」みたいな感覚でお茶を飲めるようになった。それって、さっきみたいな話の解像度がないと出てこない感想だと思うので。そういう所まで、僕らは知りたい。そうなると、やっぱり現場に行かないと何も得られないので。なので、僕らは徹底して、毎回お茶を仕入れる際にも畑に行かせてもらって直接お話を聞かせてもらうようにしていて。その上で、そのストーリーとともにお茶を届けるっていうのを徹底しています。

    これまでに30ヶ所以上の畑を訪ねてきたという二人。「好きな茶畑は?」と聞けば、静岡の牧之原や川根や、福岡、鹿児島……まさに枚挙にいとまがないというほど、次から次へとエピソードが飛び出す。シングルオリジンにこだわることで、たくさんの個性的なお茶とその作り手と出会え、刺激は絶えないようだ。

    畠山 さっきは、やぶきたを飲んでいただきましたけど、「さえあかり」なんかはすごく個性的。三重の清水さんという方がつくっているんですけど、かなりガツンとくるタイプで、出汁とかトウモロコシみたいな味がする。毎日サクサク飲むタイプのお茶ではなくて、ゆっくり集中して飲むタイプのお茶。

    藤井 さえあかりを料理人の人に飲ませると、「出汁みたいだね」って言われるくらい、ほんとアミノ酸飲んでるみたいだもんね。ワインに「テロワール(土地の個性)」っていう言葉がある通り、どこでつくられたかが味にしっかり反映される。お茶もそうですよね。テロワール、作り手の想いがちゃんと味にでてくるはずなんだけど、そういう情報が市場には出てこないので、じゃあ僕らが伝えなきゃなっていう。

    FETCのボックスの中には茶葉と一緒に、そのお茶についての情報が書かれた“手紙”が同梱されている。生産者の想いやその土地の個性を二人が汲み取って伝える役割を担っている

    二人が熱く語ってくれたように、お茶の世界は深い。でも、深い世界に飛び込むのには、なんとなく不安もある。「自分にとって好きなものが見つかるだろうか?」と。

    畠山 他のドリンクもそうですけど、結局は色々飲んでみることがベストというか。サブスクリプションの定期便はそのためにやっているものでもあります。お茶にはすごく甘いやつもあれば、めちゃめちゃ渋いやつ、香りが高いやつがあったりするんですけど、その個性の強いものを試してみて、自分は甘さが好きなのか、渋さなのか香りなのか、どこ寄りなのかを探すのがおすすめです。色々な個性を試しながら、自分のポイントを見つけるっていうのが楽しいのかなと思います。

    お茶の味、香りで、さらにはその背後にあるストーリーで。自分たちが感じるお茶の好きなポイントをシェアしている二人。最後に、FETCとしてその手応えはと聞くと、「まだ全然ですね」と口を揃えた。伝えきれていないストーリーはまだたくさんあるし、これからも茶畑での出会いは増えていく。二人の好きがふくらんでいけばいくほど、今よりもたくさんの方法で好きを伝えていかなければならない。二人からは、それが楽しみでたまらないといったクールな熱さが感じられた。

    FETCからシングルオリジンセレクトをおすそわけ

    シングルオリジンのお茶を飲み比べるのにぴったりなFETCセレクト茶葉をセットにして、3名様にプレゼント。まずは飲み比べて自分のポイントを探るところから、個性的なお茶との出会いを楽しんでみては。応募はこのページ末尾のアンケートから。

    おすそわけセットのイメージ。茶葉の種類はあらためて二人がセレクトしてくれるため、写真のものとは違った組み合わせになるのでお楽しみに

    FAR EAST TEA COMPANY|ファー イースト ティー カンパニー
    シングルオリジン(単一農園・単一品種)のお茶をオンラインで届ける日本茶ブランド。2018年に畠山大さんが渋谷のんべえ横丁にオープンしたミルクティースタンド(べにふうきという品種専門)を前身として、2019年に幼馴染の藤井航太さんがジョインしECを主軸としながら、今回撮影場所として利用させていただいたシーシャバー[SWAY]など店舗のドリンクメニュープロデュース等も行う。
    fareastteacompany.com/ja
    instagram.com/fetc_1892_jp

    Photo: Junko Yoda (Jp Co., Ltd.)
    Text & Edit: Yoshiki Tatezaki
    Location: SWAY


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