• 美味しい抹茶ラテが日本茶文化への入り口になる
    [Satén]小山和裕さんが教える抹茶の楽しみ方<後編>

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    美味しい抹茶ラテが日本茶文化への入り口になる
    [Satén]小山和裕さんが教える抹茶の楽しみ方<前編>

    コーヒーチェーンからコンビニ、スーパー、自動販売機まで、気づけば「抹茶ラテ」は人気カフェメニューの一角を担う存在になっている。ここ数年来、海外から逆輸入的に“matcha”の魅力が見直され、ラテの他にもスイーツなどに活用されるなど、抹茶はポップなイメージで幅広い層に定着している。“ポップで流行りの抹茶ラテ”と見られがちではあるが、その裏には深い考えもあるようだ。[Satén]の小山さんを訪ねて、「抹茶」について改めて伺った。

    2021.12.14 INTERVIEW日本茶、再発見

    言うなれば“ウケがよさそうな”抹茶ラテの裏側にある、深い考えに気付かされた[Satén japanese tea]小山和裕さんとの対話。世界的に人気が高まる抹茶に対する一種の危機感も持ちながら、より多くの人が美味しい抹茶に日常的に親しむためにさまざまな取り組みをしている。[Satén]でプロデュース・販売している抹茶茶器もそのひとつ。最近は、お店でも使用する京都宇治の[辻喜]の抹茶をスティックで発売した。

    ポケットサイズの箱にシンプルでクラシックなデザイン。中には2gの抹茶スティックが8本入っている。上の写真はそのスティックで点てていただいたホットの抹茶。クリーミーできめ細かな泡が美しい。

    でも、小山さん、実際抹茶を点てるのって難しくないですか?

    「もちろん、練習すれば上手くなっていくものですが、茶筅があればその他は家にあるもので始められますよ」

    まず用意するのは、茶筅、片口抹茶碗、ふるい、スプーン。

    「茶筅というとハードルが高いと言われるのですが」と小山さんは笑いながらも、Amazonで簡単に手に入ると教えてくれた。

    「80本立や100本立というのが先端の穂の数なのですが、80本あれば充分です。今は竹製だけではなく、セラミック製のものもあって、分解できたりするので衛生的でたまに使うならそういった素材のもありです」

    <点て方指南①>
    お湯と抹茶で、ホットの抹茶ストレート

    片口はORIGAMIとSaténの共同開発した「片口抹茶碗」。上部に返しがついていて、泡立てやすくなっている。カラーバリエーションも魅力

    まずは抹茶スティック1本(2g)を片口に入れ、ふるいにかける。特に点てるのに慣れていない人は、この一手間をした方がダマをつくらず上手く点てられる。

    スティック一本に対してお湯の量は100cc。お湯は一度に100cc入れるのではなく、最初に30ccほど入れ、茶筅で混ぜ溶かしてから、残りの70ccほどを入れる。

    茶筅は親指と中指と人差し指を中心に軽く持つ。始めは、卵をとくように大きな泡を作ることを意識して「の」の字を書くように混ぜる。この時、動かすのは手首から先。

    大きな泡を“切る”イメージで小刻みに混ぜ、きめ細かい泡をつくっていく。抹茶が溶けたらカップに移す。

    「抹茶ストレート」の完成。すっきりしていて、朝に飲みたくなるような一杯。きめ細かい泡によって口溶けがふわっと、抹茶が持つ甘味も感じられた。

    お湯の量を少なくすれば濃茶のように、より濃厚に点てることができる。エスプレッソの要領で、そこにスチームミルクを流し込めば、抹茶ラテができる。カフェラテラバーでご家庭にスチーマーがあればぜひ抹茶でも試してみては。

    ただ今回、スチーマーを持ち合わせていない人のために……特別に「牛乳点て」の方法も教えていただいた。

    <点て方指南②>
    牛乳と抹茶で、ホットミルク抹茶

    手順は「抹茶ストレート」と同様、違うのはお湯の代わりに温めた牛乳を使うことだけ。

    レンジや鍋で温めた牛乳を150cc、2回に分けて入れる。抹茶をしっかり溶かしきれば、泡にこだわりすぎなくとも美味しい。混ぜる時間が長ければ、その分温度が下がってしまうので、お好みのバランスで点ててみよう。

    ホットミルクに抹茶のコクが溶け込み、かなり飲みやすい。朝にももちろんよさそうだけれど、休憩時間にジュース感覚で楽しめそう。

    気軽だけど、すごい抹茶を楽しめる時代

    「気軽に楽しめるスティックの抹茶ですが、これもお店と同じく京都の[辻喜]さんというすごい作り手さんのものです。[辻喜]さんは本当にストイックに、固定概念にとらわれず試行錯誤を積み重ねて、抹茶をつくるプロセス全てにおいて意味があるという作り手さん。スティックはお店の抹茶とはあえて違うブレンドにしてもらっていて、それは各家庭で買う牛乳が違ったりするはずなので、どんなものにも合わせやすい味と香りにしていただいたということです」

    内閣総理大臣賞を受賞する京都宇治白川の[辻喜]の抹茶。こんなにも気軽にいただけるのは、考えてみればすごいこと。入り口としては、そうしたブランドを意識する必要はないけれど、一歩二歩踏み込めば、こうして小山さんから作り手のお話を詳しく聞くこともできる。

    「日本茶をより豊かに、より楽しく、より面白く」ことを目標に、その文化への扉はとにかく開きやすく、親しみやすく、飲む人の目線でお茶を届けている小山さん。少し抹茶のイメージが変わったのでは?

    素晴らしい作り手にまでつながる一杯をぜひご自宅でも楽しんでみてほしい。

    小山和裕|Kazuhiro Koyama
    株式会社抽出社代表。[茶茶の間]などを経て、吉祥寺の日本茶とコーヒーの店[UNI STAND]の店長を務めたのち、バリスタの藤岡響氏と西荻窪に[Satén japanese tea]を開業。シングルオリジンのお茶から抹茶ぷりんまで幅広いメニューで人気店となる。店舗のプロデュースや「Japan Matcha Latte Art Competition」の運営など、活躍の場をますます広げている。
    saten.jp
    instagram.com/saten_jp (Satén japanese tea)
    instagram.com/matchalatteart_japan (Japan Matcha Latte Art Competition)

    Photo: Eisuke Asaoka
    Text: Mika Kobayashi
    Interview & Edit: Yoshiki Tatezaki

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