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2021.08.24

「部位ごとの特徴と
パーツのブレンドとは?」
Ocha SURU? Lab.
お茶の仕上げ編 Part 3

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私たちの日常のライフスタイルがたえず変化するなか、
お茶のあり方はどうだろうか。

「暮らし」と「お茶」との間に「問い」を立て、
現代の感覚で私たちなりの「解」を探求する「Ocha SURU? Lab.」。
その探求の道のりの中で、
皆さまの日常の中の「お茶する」時間が
より楽しいものになればという想いとともに、
CHAGOCORO編集部が総力を挙げて研究を重ねていきます。

これまでのOcha SURU? Lab.の記事も合わせてお楽しみください。
シーズン1:Licaxxxさんと一緒に お茶にハマる。 お茶するラボ、始めます。 Ocha SURU? Lab. Part 1
シーズン2:自分の感覚で選べるお茶とは Ocha SURU? Lab. 一煎パック編 Part 1


お茶はどのようにして私たちの手元に届くのか?

「お茶はどのようにして私たちの手元に届くのか?」を問いとして、普段は見ることのないお茶づくりの裏側を学んでいる3シーズン目のOcha SURU? Lab.。

静岡の[茶屋すずわ]と[和田長治商店]では、荒茶という“素材“を「選別」して「火入れ」をするという製茶問屋の仕事を体感させてもらった。

次のステップは「合組(ごうぐみ)」だ。
合組とは、異なる茶葉を組み合わせて味をつくるブレンドのこと。一般に飲まれる日本茶のほとんどはブレンドである、とはよく聞く話。最終的なお茶の味を決める奥深い世界。私たちが飲んでいるお茶のことを理解するために、特に重要になりそうな要素だ。

そんな合組の裏側を見せてくれたのは大阪・枚方の[多田製茶]の多田雅典さん。以前CHAGOCOROで取材した記事では、季節の変化を楽しむ「HENGE」というオリジナルブレンドを作ってくれた。お茶屋の個性が光るという合組の世界を、多田さんの案内で体験してみよう。

一本のお茶の木から採れる部位を組み合わせる

合組というのは、意味としてはブレンドということではあるけれど、お茶の世界以外では聞かない言葉だ。誰もが飲んだことのある緑茶のほとんどが、この合組というプロセスを経て作られたものである一方で、その言葉自体はほとんどの人にとって依然聞きなれないもので、ある意味マニアックな世界。しかしこの日、多田さんが並べてくれたお茶の“部位”一つひとつを味わってその違いに触れてみると、合組という日本茶特有の言葉がなぜ存在するかが少しわかる気がする。

上の5皿はすべて同じ荒茶から大きさや重さなどによって仕分けされた部位。つまり、一本の茶の木から分類されたパーツだ。

左上が「頭(あたま)」と呼ばれる“大きな葉っぱ”の部分。
「よくお茶を摘むときは『一芯二葉』とか『一芯三葉』と言われますが、機械で採るとどうしてもさらに下の葉っぱまで混ざってきます。そうした大きな葉っぱを『あたま』と呼びます。がさっと手を入れてみてもらうと手触りの違いがわかると思いますよ」と多田さんが解説してくれる。

適切な大きさの葉っぱの部分が「本茶」と呼ばれ、煎茶茶葉のメインとなる部分。製茶問屋が扱う荒茶には、それ以外にも実は色んな部位が混ざっているということだ。

[茶屋すずわ]の渥美さんや[和田長治商店]の和田さんの話でも感じたことだが、“お茶の葉ってお茶の葉だけではない”のだ。「あたま」のように大きくて硬い質の違う葉もあれば、茎の部分も混ざっている。だからこそ「選別」が必要になってくる。

もう一度写真に目を戻してみよう。「頭」の右にあるのが「茎」、そのまた右にあるのが「ヒゲ」という部分。茎はわかるが、ヒゲとは何だろう?

「ヒゲは、茎の皮なんです。茎の中心部は残るのですが、皮が剥けるというか裂けるようにヒゲという軽い部分が出てくるんです。色はよく出るのですが、ヒゲは使い勝手がよくないパーツですね。と言うのも、傷みやすいので、味で悪さをしやすいんです」

なるほど、ぱっと見たところ一番青々とした緑色だが、日持ちの違いが完成品のお茶にとってはよくない影響を与えることもあるということだ。

そして下の段にいくと、左が「芽」、右が「粉」と呼ばれる部分。茎を伸ばし芽を出し葉を成長させる植物としてのお茶の像がつながった気がする。

ともあれ、それぞれを味見してみよう。

「検茶」という品評会のマナーにしたがって香りと味を試してみる。

今回、合組を一緒に体験したいとラボに参加してくれたのは上田倫史(ともふみ)さん。様々な企画の立案や運営を手がけるプランナーとして活躍する上田さん、最近はお茶関係のプロジェクトに携わることもあり急速にお茶の世界を深めているとのこと。

お茶好きでもなかなかできることではない、お茶のパーツのテイスティングに神経を集中させた。

上田 茎の香りは優しいというか、強くはないですね。甘さというか、野菜っぽい感じがしますね。ヒゲは、これ嫌いじゃないかもしれないです。

多田 茎の香りはメントールっぽいというか、清涼感がありますよね。ヒゲの味は、良くも悪くも、すごく表面的な味なんです。お湯の上にふわっと乗ったお茶の膜みたいな。芽はそれに比べてズドンとくるような重さのある味です。

上田 面白い。そうやって言語化してくれるって嬉しいですね。楽しいです。芽は重さのある、重力を感じる味かぁ。

多田 なぜかというと、育つ時、芽に栄養が集まるんです。つまり栄養のかたまり。だから味も濃くなるっていうとわかりやすいですかね。

上田 粉は、正確かわからないですが、抹茶っぽい感じがありますね。色も濃いですし、青さがすごくあります。

多田 そうですね、イメージは抹茶に近いかもしれないですね。熱湯でサッと淹れれば嫌な苦さが減って、香りももっと立ってくるかもしれないですね。

パーツのブレンド

多田 頭とかも熱湯で出していいとされますよね。苦み渋みが濃すぎないのでさっぱりとしていて、人によっては本茶より好きかもしれません。うちでは「柳」(頭の別名。地方によって呼び方や意味するところが異なる)としてそのまま売るケースと、玄米茶として使うことがあります。

上田 他の部位もそれぞれ商品になるんですか?

多田 はい。基本的に捨てるところは一切ないです。うちで今売っている「粉茶」と「茎茶」を持ってきたのでこれも飲んでみましょう。

左から粉茶と芽茶のブレンド、茎茶、そして比較のために煎茶も

上田 それぞれ火入れして売ってるものがあるんですね。

多田 これ(写真左)が粉茶をベースに芽茶を少量ブレンドしたものです。粉だけだと味わいがライトになるため、重厚さを出すためにうちでは芽茶をブレンドしています。茎茶をベースにしたお茶(写真中央)は、本茶がブレンドされています。茎茶だけでもすっきり甘くて美味しいのですが、味が軽すぎるのと香りに複雑さを持たせたいので本茶をブレンドしているんです。だからこれらは“パーツのブレンド”なんです。味のボリュームを足したければ芽茶、 香りや味の複雑性を足したければ本茶 、といったように。

一本の木からできる部分を選り分けて、それぞれに適切な火入れで香味を整え、ベースとなるパーツを引き立てるために異なる特徴の力を加える。改めて知ると、とても手の込んだ作り方だと感じる。

分けて合わせてというこれほどまでに細かな作業をやり続ける飲み物が他にあるだろうか……。そう思うと、日本茶の世界に「合組」という特別な言葉が存在することに合点がいく気がする。しかし、パーツのブレンドは合組の一つの形にすぎない!

次回は、異なる茶の木=品種のブレンドについて掘り下げていこう。

多田雅典|Masanori Tada
大阪に160年以上続く製茶問屋[多田製茶]の専務取締役。マーケティング会社に就職し、大手メーカーなどの商品キャンペーンの企画などを手がける。28歳のときに日本茶インスタラクターの資格を取得。「日本茶をもっと楽しく、もっと自由に。」をテーマに掲げるオッサム・ティー・ラボというグループでは、海岸での喫茶などさまざまなイベントを展開してきた。日本茶アドバイザー養成スクールの専任講師(日本茶鑑定)や大手調理師専門学校で日本茶の講師を務める。
tsusen.net
instagram.com/tadateaproducts

Photo: Yuri Nanasaki
Text & Edit: Yoshiki Tatezaki
Produce: Kenichi Kakuno (Itoen)

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