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2020.12.25

自分の感覚で選べるお茶とは
Ocha SURU? Lab.
一煎パック編 Part 1

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日常のライフスタイルがたえず変化するなか、お茶のあり方はどうか。「暮らし」と「お茶」との間に「問い」を立て、現代の感覚で私たちなりの「解」を探すべく、CHAGOCORO編集部が総力を挙げて研究を重ねる「Ocha SURU? Lab.」。

大のお茶好きであるDJのLicaxxxさんと一緒に、「暑い夏に涼を届けるお茶の楽しみ方とは?」という問いについて考えた前回のLab.では、グラスを使って急須を再解釈した「Ocha SURU? Glass Kyu-su(略してOSGK)」というツールが誕生し、大きな反響を呼びました。

そして、今回OchaSURU? Lab. 第2シーズンでの問いは……

「変化の2020〜2021年、今、淹れたくなるお茶とは?」

新型コロナウイルス感染拡大により、今年は人々の価値観、ライフスタイル、様々なモノが激変する年となりました。来年も様々な物事が変わり続けていくでしょうし、そこから新たな“当たり前”が生まれるでしょう。一方で、家で過ごす時間が増えたことで料理をしたり、音楽を聴いたり、新しい趣味を始めたり、自分の好きを発見したり深めたりしている人も多いはず。さて、そんな中でお茶はどうだろう?

「家でこのお茶飲んでみよう」「ちょっとお茶を淹れてみよう」と思うための入口はできているでしょうか?

今回は、今までCHAGOCOROに出演してくださった方々と共に考えてみました。


みなさん、お茶って毎日飲みますか? 朝ごはんと一緒に、お昼ご飯や夕ご飯しっかり食べた後に、仕事中あるいは休憩時間に。いろんなタイミングで飲めるからこそ、いろんな種類のお茶があると便利ですよね。

たくさんの作り手によって生み出される多様な茶葉。自分のライフスタイルにあったお茶を選ぶことを当たり前=習慣にできたら、暮らしはさらに楽しくなるはず。

そんな思いを胸に、狭山でお茶をつくる奥富雅浩さん、日本茶カフェ[Satén japanese tea]の小山和裕さん、クリエイティブに日本茶を広める「VAISA」の郡司淳史ぐんじ あきふみさんのお三方を交えて、「お茶をどう飲み始めてもらうのがよいのか」意見交換をしました。

リーフで飲むお茶の世界

まずはお茶を淹れていただきます。奥富園の「鬼の白骨」をOSGKで、奥富さん直々に

小山 奥富さんにお茶を淹れていただくことって初めてかもしれないです。何かの試飲会の時にいただいたくらいですよ。

奥富 このガラス急須は初めて使います。なるほど。

郡司 めちゃくちゃいい香りですね! すごい香りが立ってる!

奥富 火の香りが強いお茶を作ろうと思ったんですよ。はじめは深蒸しの茶葉でやろうとしたんですが、ある程度まで火を入れるとどうしてもこもった感じになってしまって。それが納得できなくて試していった結果、茎が一番しっくりいくものでした。

— こうした香りの広がりはリーフで淹れる醍醐味ですよね。今奥富さんがおっしゃったように、全国には色々なお茶をつくられている方々がいて、リーフで飲むということによってそうしたお茶との出合いが広がるはずだと思うのですが。

奥富 そうですね、国内に良い農家さんがたくさんいます。そしてやっぱりリーフで飲むことを前提につくっている。ティーバッグのような選択肢が増えるのはいいことですが、ティーバッグとして美味しくつくろうというのはまだまだ少ないです。僕ら農家は畑を作って木を植えて育てて、そこから芽を摘んでお茶をつくっています。そのお茶が飲まれることによって初めて「お茶」というものが完結すると思っているんです。リーフを急須で淹れるというのは他では代えがたい体験だと思いますし、それが楽しいものなんだよって伝えて飲んでもらうことがまず入口だと思います。

埼玉県狭山で15代続く茶園「奥富園」を営む奥富雅浩さん。伝統的な手揉みのお茶から萎凋をきかせたお茶など、さまざまなお茶づくりに毎年挑んでいる他、日本茶インストラクターの東日本ブロック長としてお茶淹れの技術を教える立場にもある

郡司 コーヒーがあれだけ話題になっている一方で、お茶も同じようにならないわけはないと思っています。ただ、お茶にはもっと「表現力」が必要なのでは?と思っています。香りだったり味だったりの表現がもっと豊かになれば、お茶に興味を示す人が増えると思いますし、ポテンシャルがとてもあると思います。

小山 お茶を改めて味わうことは、「水」と同じで今まで意識せずに飲んでいたものにフォーカスするということで、例えばコーヒーのバリスタにとっても「新しい発見」になるんです。知っているようで全く知らなかったというくらいの新鮮さがある。郡司さんが言う通り表現力は大事で、日本茶のフレーヴァーはコーヒーよりも多いと言われているくらいすごく深いんです。コーヒーのプロでもわからないという人がいるほど、それってすごいことだと思います。そうした探究できる領域はすごく大きいんです。

— すごく深い世界で、ある意味「ハマり甲斐のある」世界ですよね。一方でそれが難しそうと思われている節もあるのかなと思いますが。

小山 確かに難しく捉えがちなところはあるかなと思います。「VAISA」さんの葉書パッケージだったり、自由な形でスタートしてみていい。そこから自分に合う味を探したり、茶器を自分のスタイルに合わせて変えてみたり、それは人それぞれでいいんです。そこを「これじゃなきゃダメ」という感じで縛っていたのが今までなのかなと。実際、日本茶はコーヒーよりもスポット(美味しく淹れるためのポイント)が広いので難しくはない。お茶はほぼ美味しく入るので心配することないんです。

現代の若者に向けてお茶を愉快に届ける日本茶ブランドVAISAの郡司淳史さん。2杯目にVAISAの「山のお茶」を淹れていただきました。奥富さんと小山さんの前で少し緊張したご様子……

奥富 これまで日常的にお茶を飲んでいた世代の人が選びたいお茶と、日常的に飲んでいない若い世代が選びたいお茶ってちょっと違ってくると思うんですよね。うちでも変わったお茶もつくり始めているし、「なんだろうこれ」っていう入口からも入ってきてほしいというのは意識しています。俺、バンドやってたんですけど、その時にどうしてもいいギターが欲しくなるんですよ。買っただけで上手になった気になったり、実際たくさん練習するようになったり。そういう側面がお茶にもあっていいのかなと思ったんです。自分は最近いいギターよりいい急須が欲しいです。

小山 この急須(OSGK)がそれになれば面白いですよね。これ買ったから淹れるようになるみたいな。

郡司 今のお話で確かにと思ったのが、急須が(音楽)プレイヤーだとしたら、気分によって曲を変えるように、それくらい自然に「今はこんな気分だから、ほうじ茶がいいな」とか「リラックスできるお茶がいいな」ということができるようになるのが習慣化の第一歩なのかなと。急須というプレイヤーができて、その次に何がほしいかっていうことですね。

小山 「今朝はこれかな」っていうふうになってほしいですよね。飲むことだけが価値ではなくて、生活の中での選択肢になっていること。お茶が生活シーンの中にあるということをもっと見たいです。

郡司 僕、雨降っているときにショパンが聴きたくなるんです(一同感嘆)。空気感が好きで、そんな時にはこのお茶を選ぼうかなとか。

奥富 こんなに日常の中で気分に合わせて選べるものだということに、まだ気づいていないだけなんじゃないかなと思います。そこまで行く道のりが舗装されていない。でも可能性はすごくありますよね。

Ocha SURU? Lab.メンバーの角野さん、今回新たなアイデアを持ってきてくれました

— 角野さんが考えている「一煎パック」というアイデアにさらに意味づけされるようなお話が出てきました。

角野 OSGKという“ツール”がある上で、お茶をより生活に取り入れるにはどういうことが必要かということがテーマかなと思いました。習慣化と言うとちょっと硬いのですが、今みなさんがおっしゃったような、気分に合わせて選びたくなるとか人それぞれで飲み方が違っていいということは大切だと思いました。「一煎パック」というのは、一回で飲み切るだけの量の茶葉が入っているパッケージです。サイズも小さいですし、同じようなパッケージで色々な作り手さんのお茶がセットになっていたら面白いんじゃないかなと。そのとき聴きたい曲を選ぶみたいに違う種類の茶葉が一煎分ある。それが入口になって、先ほど小山さんがおっしゃったように、深い世界に入っていくこともできる。

西荻窪にある人気の日本茶喫茶[Satén japanese tea]の小山和裕さん。陽も落ちかけ少し冷えてきたところ、茨城県古河市の「吉田茶園」がつくる砂炒りほうじ茶を淹れてくれました

奥富 異なるお茶屋さんのお茶が一つのセットになるってすごく新しいと思いますよ。普通あまり他のお茶屋さんに行かないですからね。

小山 一袋100g、50gっていうハードルの高さはありますよね。50gでもまだ多い。一煎っていうのは入口としてありじゃないかなと思います。自分のお茶がどう飲まれるのか気になりますし、このほうじ茶も意外なタイミングで飲まれるかもしれない。そういうことが見えてくると面白いですよね。

角野 音楽ってどう聴くかとか何を感じるかって自分で掴み取るみたいな部分がありますよね。だからその人の真実になるっていうか。そういうふうに、自分にとって本当のフレーヴァーを感じられたらすごいですよね。

小山 他の人と感じ方が違ってもまたそれが別のきっかけになったり。悲しいときに『リンダリンダ』聴いたっていいですもんね(笑)。

郡司 そうそう、「正解」ではなくて「自分にとっての納得感」。自分はこれだということが時代の変化とともに求められています。実はさっきお茶を淹れていたとき「あれ、こうじゃないな」とか考えながらやっていたんですが、それがそもそも違うのかもと思いました。こちら側からいろんな味があっていいんだよっていうメッセージとともに、いろんなお茶を提案してあげるのはいいですね。

角野 だから「これでいいのだ」っていう感じですよね。そういう姿をもっと見たいですね。

奥富 熱湯で淹れると「違う」と言われたりもするのですが、それは香りを楽しんでほしいと思っているからだったり、今こういうのを飲みたいあるいは飲んでほしいというところはもっと自由になっていいと思います。

個性のあるお茶を一杯分選び取って気軽に飲める。そんなお茶との付き合い方を始められる「一煎パック」。これまでCHAGOCOROでは多くの生産者の方やお茶屋さんに想いを聞いてきましたが、そうした方々のお茶をより多くの人に実際に試してもらえる機会が提供できれば面白そう。一煎パックのアイデアに手足がついて歩き出しました。次回はパッケージのデザインについて考えていきます。

過去の取材記事はこちら
江戸からつづく狭山の茶園 今年もお茶づくりは止まらない 奥富雅浩さん
西荻窪の街角に生まれた 日本茶とコーヒーの交差点 Satén japanese tea
自由で、おおらか。VAISAが切り拓くお茶の道

Photo: Taro Oota
Interview & Text: Yoshiki Tatezaki
Assistant: Emiko Izawa

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