• UAさんが冗談抜きで夢中な「お茶」の話<後編>
    日常にインスピレーション与えるオリジナルブレンド誕生

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    UAさんが冗談抜きで夢中な「お茶」の話<前編>
    楽曲裏話と、忘我の瞬間につながるお茶の存在

    文化をインスパイアするお茶メディア「CHAGOCORO」の特別企画にご登場いただくのは、アーティスト・UAさん。デビュー翌年に発表した「情熱」をはじめとした代表曲は今なお色褪せぬ名曲として世代を超えて聴き継がれ、さらに最…

    2022.09.22 INTERVIEWCHAGOCORO TALK

    最新EP『Are U Romantic?』が好評発売中のアーティスト・UAさん。音楽フェスや番組のほかにも、ミュージカル出演など多忙を極める東京滞在期間、特別にCHAGOCOROで「お茶」の取材をさせていただいた。

    この日はUAさんに日本茶のブレンドを体験していただくために、お茶生産者の富澤堅仁さんに熊本県益城町からお越しいただいた。後編では、UAさんにお茶を飲み比べていただきながらさらにお話を聞いていく。

    “日本茶はアイデンティティに関わることだと思います”

    富澤 お話聞かせていただいていましたが、いやぁ、良かったです。本当に。日本茶っていうのは本当に今減少傾向で、生産者の数も明らかに減っているような状況なんですね。そんな中で、音楽文化のアイコンであるUAさんが日本茶に興味を持っていただいて、こういう場を設けていただいたというのは生産現場にいる人間にとってもすごく活力になると思いました。私もUAさんの歌を聴きながら青春時代を過ごしてきましたので、すごく嬉しいです。

    UA それはそれは。日本というこの島国って、他にはないロケーションで、自然のエネルギーが他と比べられないぐらい強いと思うんです。四季がはっきりしていること自体、すごくレアですし。だから、日本茶と呼ばれている通り、多分どこにもないお味が生まれるんだと思うんですよね。それを失ってしまうというのはあり得ないですよね。アイデンティティに関わることだと思います。

    富澤 そうですよね。ゼロになることはないですけど、これを生業に生活している、若い後継者の方たちが今後どうやったらちゃんと生活していけるようにできるか、というのを考えていかなきゃいけないとすごく思っています。私が有機栽培に転換したのも、今後海外の方たちにも日本茶を飲んでもらわないといけない、それが次世代のためになるという思いがあるからです。また味づくりにも新しいトレンドが生まれています。たとえば「萎凋」という工程を活かして、香りと旨味が両立したようなお茶が出てきています。ウェルカムティーとしてその萎凋茶をご用意しましたので、どうぞお召し上がりください。

    UA イチョウ? ごめんなさい、どういった字を書くのですか?

    富澤 草冠に委員会の委で「萎れる」という字に、チョウが、にすいに周で「凋落」とか「しぼむ」という字で。

    UA え〜、どちらも普段あまり使わない字ですね。おぉ、予想以上にパンチがありますね。

    富澤 お茶っていうのはですね、先の方、若い芽を採るとアミノ酸量が多くて旨味甘味を強く感じるんです。専門用語で「みるい」って言うのですが。やわらかい芽のことを「みる芽」と呼びまして、そのみる芽の時に摘んで萎凋させたお茶。ですので、パンチがあるというのはまさにその通りです。

    UA お茶の世界の用語が気になってきた。「みるい」って、全然聞いたことないですよね? やばい。すごいニューワード。「みるい」は私ちょっと、歌詞に使いたいですね……。

    日本茶を飲み比べ、UAさん自らブレンド

    早速、富澤さんが熊本で作るお茶を飲み比べてみる。6種類の煎茶を並べて、一杯ずつ富澤さんが淹れながら紹介してくれた。それぞれの特徴をUAさんのインプレッションとともにまとめてみよう。

    ①薮北[かぶせ茶]
    各地で育てられるメジャーな品種である「薮北(やぶきた)」を、被覆栽培したお茶。被覆栽培によって旨味の強い香りだが、苦味・渋味・旨味・甘味とバランスの取れた味わい。「香りの印象に比べて、味はとてもマイルド」とUAさん。「丸く甘い」という富澤さんのお茶づくりのテーマが感じられる一杯。

    ②奥緑[かぶせ茶]
    「奥緑(おくみどり)」は晩生と呼ばれる芽が出るのが遅い品種。「遅く生えてくる品種は、旨味・甘味が強くて、今僕も個人的に好きなお茶です」と富澤さん。一口味わったUAさんは「おおぉ、薮北とは全く違った印象です。土を感じるような香りの印象で癖がない。でも、いただくとすごくしっかりしていて、感じ方が逆ですね」。

    ③奥豊か[かぶせ茶]
    富澤さんが一押しするのが、こちらの「奥豊か」。豊かな旨味で、パンチのある鮮烈なお茶。「おおおー、すごいですね。朝淹れるのにとても良さそう。これ好きになりそうです」とUAさんも覚醒感のある味わいをしっかり受け取った様子。

    ④冴えあかり[かぶせ茶]
    新しい品種だという「冴えあかり(さえあかり)」は、奥緑と反対に早生のお茶。富澤さん曰く、穀物のような独特の香りが特徴。「後味がすごくしっかりしている。面白いですね」とUAさん。

    ⑤薮北[露地]
    こちらは一杯目と同じ品種を、露地栽培(遮光のための被覆をせず自然光で栽培)したお茶。「色がまた違いますね」とUAさん。「はい、被覆栽培の方は葉緑素が強くて緑が濃くなるのですが、こちらはお茶本来の色、苦味、渋味です」と答える富澤さんに、「懐かしい感じがしますね」とUAさん。

    ⑥咲き翠[露地]
    最後の一杯は、苦味・渋味が少なくすっきりした「咲き翠(さきみどり)」。昨年収穫の茶葉を保存してあることで、少し熟成が効いた香りが特徴的。香りが鼻に抜けて、すっきりと飲める一杯。

    帯ベルト(KAPUKI)

    富澤 一通り飲んでいただいた中でちょっと気になったものとか、もう一度飲んでみたいと思ったものがあればそれを基本にブレンドしていくということもできます。いかがでしたか?

    UA キャフェインでちょっと、軽く飛んでる感じです。本当に、どう組み合わせてもいいってことですよね?

    富澤 はい。自由に試していただいて。

    UA こちら(奥緑)は味がしっかりしていたんですよね。これ(冴えあかり)も印象的だったんです。難しいものですね。感覚でいくより、ちょっと考えます。

    富澤 いや、感覚でいいと思います。

    UA 感覚でいいんですね。うーん、この二つにしてみます。

    奥緑と冴えあかりを1:1の割合でブレンド。果たしてお味は……。

    UA ああ、きれい。うん、香り最高ですね。

    富澤 どちらもかぶせ茶ですので、旨味、甘味を感じてもらえれば。またお茶が面白いのが、今90度から95度っていう温度帯で抽出をしましたが、これをもっと60〜70度とかで淹れるともっともっと旨味が増していくんですよね。

    UA うん。やっぱり、こちら(冴えあかり)の後から来る強さ、すごいですね。もうちょっとキリッとさせてもいいのかなと、ちょっと、思ったんですけど。これだと、着地するっていうか、それはそれで自分を取り戻すという感はあるけど、さらにインスピレーションとか少し渋みを効かせて、ピリッときた方がいいかなと思ったんですけど。

    富澤 おぉ、さすが、感覚すごいです。すると、薮北の路地を少し使ってみるといいかもしれないです。

    ピリッとした感じを加えるために、次に試したブレンドは「冴えあかり2:奥緑1:薮北(路地)1」。

    “いい意味で逸脱できるような気がしました“

    富澤 路地がちょっと入るだけで、いい苦味のすっきり感がおりてくる感じですね。

    UA ああ、そうですね。美味しいですね。これ、面白いですね。不思議なことに1杯目とは全然違っていますね。ピリッと、一回世界から離れるような感じが今回のテーマには合う。私のイマジネーションかもわからないけど、いい意味で逸脱できるような気がしました。かといって、ぶっ飛んでいくだけの感覚ではなく、ちゃんと地に足がつく要素も残っているという。ポーンと、真っ直ぐ、軸が立つような。

    富澤 UAさんの表現はすごく鋭くて、わかりやすいです。一般の方が聞いても「あ、そんなお茶があるんだ」「試してみたい」って感覚を共有できると思いました。

    UA 軸を立てることによって、イマジネーションの扉を開く。軸がないときには、自由すぎて的が外れるんですよね。しっかり、ピンを留め置いて、そこから開くっていう感じですよね。でも考えてみたら当たり前ですけど、お茶という植物自体がちゃんと根を張ってしっかり立たないと、美味しいものには育たないわけで、人もそうあるべきだと思います。特に都会にいると、土を忘れてしまうので。

    富澤 はい。うちの祖父母が言っていたことを思い出します。「お茶は生葉の化け物だ」と。いいお茶は、畑をしっかりつくることだっていうのをずっと私も言われて育ちました。

    UA なるほど。土ですよね。

    富澤 土です。人間もそうですが、やっぱりいいものを食べれば、いい循環が生まれます。土も一緒で、いいものをちゃんと与えて、有機物がしっかりしてくれれば健やかに育つ土壌になります。私もお茶をつくる上で、それが一緒だと思っているので、これからまたよりよいものがつくれるように頑張ってまいります!

    UA 素晴らしいと思います。ロマンティックという話をしましたが、言葉で聞くと何かすごく壮大なイメージがあると思うんだけれど、でもこうやってお茶のお話を聞いているだけでも、言葉が一つ一つロマンティックですよね。何より、地球っていう星に思いを馳せること自体、すごくロマンティックじゃないですか。なかなか、都会の街並みで暮らしていると、地球っていうのを感じることは難しい。情報文化で、パソコンを開いたら、どんな景色でも見られるけれど、体験しているわけではないですよね。都市の暮らしの中で、自然に身を委ねる時間が少ないからこそ、お茶は一つの自然の入り口というふうにも思えると思うんですよね。何気なく、お茶に最近ハマっていましたけど、話せば話すほど、重要性が感じられますね。

    日常をロマンティックに。

    自分であるために世界から少し逸脱する時間として。

    現代に生きる私たちにとって自然とつながる入口として。

    UAさんの言葉の数々に大いに刺激を受けたのは富澤さんだけではないはず。

    今回UAさんがブレンドをした自信作は皆さんにも味わっていただけるように特別生産する予定となっている。ぜひ、UAさんの言葉を読み返しながら、「お茶」を聴きながら、MVを観ながら、あるいは忘我に向かいながら、お茶を楽しんでいただきたい。

    UA|ウーア
    歌手。UAとは、スワヒリ語で「花」という意味を持つ言葉。大阪府出身。1995年にデビューし、当時からその個性的なルックスと存在感のある歌声で注目を集める。「情熱」「悲しみジョニー」「ミルクティー」等、数多のヒット曲を持つ日本を代表する女性シンガー。2020年でデビュー25周年。ボーカリストとして様々なアーティストの楽曲にも参加している。また映画においても、初主演を果たした『水の女』(2002)や『大日本人』(2007)、『eatrip』(2009)にも出演する。そんな幅広い活動と並行し、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中で、現在はカナダを拠点に生活している。今年5月25日、約6年ぶりとなるEP『Are U Romantic?』を発表。豪華アーティストとの共作を通じて、2022年現在のポップ=ネオポップを表現した作品となっている。11月には『Are U Romantic?』東名阪ツアーを予定している(詳細はオフィシャルサイトにて)。
    オフィシャルサイト
    『Are U Romantic?』作品ページ(購入・ストリーミング)
    instagram.com/ua_japonesiansinger_official
    twitter.com/UA__KA

    富澤堅仁|Kenji Tomizawa
    熊本県上益城郡益城町で栽培・製茶・販売を行なう[お茶の富澤。]の4代目。震災後は地域に残る唯一の茶園となったが、意欲的な茶葉づくりで全国に熊本のお茶の魅力を発信している。
    ochanotomizawa.co.jp

    Photo: Masayuki Shimizu
    Styling: Kumiko Iijima (POTESALA)
    Kimono dressing: Mitsue Niino (Asami Kimono)
    Hair: Miho Matsuura
    Maku-up: COCO
    Text & Edit: Yoshiki Tatezaki
    Produce: Kenichi Kakuno & Keisuke Mizuno
    Coordination: Emiko Izawa
    Special Thanks: Kenji & Chiharu Tomizawa (Ocha no Tomizawa)

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