• 静岡の茶畑とお客様をつなぐ
    NAKAMURA TEA LIFE STORE
    <後編>

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    東京・蔵前の裏通りにある[NAKAMURA TEA LIFE STORE]。静岡県藤枝市で101年続く老舗のお茶農家「中村家」の無農薬有機栽培の茶葉を販売するとともに、急須でのお茶の楽しみ方を発信している。

    各家庭で過ごす時間が増えているいま、このお店のオーナーである西形圭吾さんにどのようにお茶時間を楽しめばよいのか、話を聞いてみた。

    1時間ごとの3煎で朝のリズムに

    静岡生まれで、幼少期からお茶に親しんでいたという西形さん。ご自身はどのように“お茶時間”を楽しんでいるのだろう。

    「茶葉を一度急須に開けたら、だいたい3煎くらいは飲めるので、ぼくは朝起きてまず1杯、そのあとは1時間ごとくらいに(同じ急須にお湯をつぎ足し)2煎目、3煎目と淹れていくんです。そうすると3煎目を飲み終えるとちょうどお昼ご飯の時間になります」

    西形さんは、朝起きて1煎目、そこからお昼までゆっくりとお茶を楽しんでいるという。また、自分自身のコンディションや時間帯に合わせてお茶を淹れられるのは、急須ならではだという。

    「お茶に含まれるカフェインはお湯の温度が高ければ高いほど多く出るので、朝は(熱湯でお茶を淹れ)濃い目にカフェインを出して目を覚ます。夜寝る前は少しぬるめに淹れて、カフェインを抑えながら1日の終わりの1杯にするのもおすすめです」

    そのときの状況や気分に合わせて濃度を調整できるのもお茶の魅力のひとつだ。

    おうちでできるベーシックな入れ方

    「おうち時間」が増えているいま、家に眠っている急須を取り出して、急須でお茶を入れてみたいという人も多いだろう。そこで、簡単に、美味しく淹れるベーシックな方法を西形さんに聞いてみた。

    【ベーシックな飲み方】

    まずは、湯飲み1杯分(100ccくらい)をケトルで沸騰させる。沸騰したらお湯を湯呑みに入れて冷ます。だいたい70度前半から中盤くらい。

    「温度計がご自宅にない場合が多いので、涼しい日で時間にしてだいたい1分くらい。湯呑みをなんとか触れるくらいの熱さです」

    お湯が冷めたら急須に茶葉を3g(ティースプーン1杯)、冷ましたお湯を入れて1分間待つ。1分経ったら何度かに区切って湯呑みに入れる。

    「注ぐ回数によって味の濃さが調節できます。区切らずに1回で注ぐと、あっさりした味に。何度か急須を水平に戻して区切って注ぐと味は濃くなります。急須の中で茶葉を対流させるんですね。ぼくは3回くらい区切って入れるのが好きです」と西形さん。

    「一番分かりやすいのはお湯の温度です。温度が高ければ高いほど渋みが出てくるので渋みの出方を温度によって調整するのが一番分かりやすいやり方です。旨味や甘みは、ある程度の温度で常に一定に出るので、一番変わりやすいのは渋みの部分です。72度を過ぎると旨味と渋みのバランスで一気に渋みが勝ってくると言われています。どんなお茶でも、70度くらいを目安にすると、お茶の平均的な味が楽しめると言われています」

    オンザロックでしっかりした味わいの冷茶

    さらに西形さんがおすすめしてくれたのがオンザロックの冷茶だ。冷茶というと、茶葉を冷水ポットに入れて半日程度、冷蔵庫で寝かせてつくる水出し緑茶がある。これは苦渋みが少なく、甘み(旨味)もあり、まろやかな味でおいしいのだが、西形さんは急須でお湯を使って淹れるのもおすすめだという。

    「グラスいっぱいに氷を入れて、そこに熱湯を使って急須で濃いめに(渋みを効かせて)淹れた熱いお茶を注ぎます。氷ですぐに冷えて、しっかりと渋みが効いたお茶になります」

    熱いお茶を入れて氷に入れる、オン・ザ・ロック的な冷煎茶。「緑茶ハイにもよく合います」と西形さんが言うように、お茶ならではの風味や渋み、香りをしっかり残して、氷の爽やかさも感じることができる夏にぴったりな飲み方だ。

    お茶を日常に

    幼少期からお茶に親しんできた西形さんにとって、お茶はまさに“生活の一部”となっている。しかし、お店のカウンターに立ち、日々さまざまなお客さんの声を聞くと、新たな試行錯誤の可能性に気づかされるという。

    「『甘いお茶がほしい』というお客様の声を受けて、日光を遮り渋みを抑えて旨味を上げる『かぶせ茶』という茶葉の育て方もしてみました。また、4年前に『つゆひかり』という中村家としては新しい品種の茶の木を畑に植えました。中村家でもともとつくっているのは『やぶきた』という品種ですが、『つゆひかり』は『やぶきた』よりも渋みを抑えて旨味と甘みを引き出せるような品種です。今年の春の収穫でようやく店頭に並べられそうです」

    お客さんの声を聞き、年単位の長い時間をかけてその要望に応える。

    「お店自体がお客様と畑をつなげる役割なんです」

    と、蔵前の実店舗をお客さんと畑をつなぐハブとして捉えていると西形さんは言う。実際に中村さんも定期的に東京に来て、蔵前の店舗に立つことがあるという。

    最後に、西形さんにお気に入りのお茶を尋ねると次のように話してくれた。

    「静岡育ちだからかもしれないですけど、昔から“変わらない味”というか、ごくごく普通のお茶が好きですね。飛びぬけて強烈な旨味があるとか、すごく甘いとか、そういうお茶ではなくて、香りもすごく良くて程よい渋みと旨味がある、飽きのこないお茶がぼくは好きです」

    お茶が日常にあるからこそ、“普通のお茶”が好きだという西形さん。西形さんおすすめのベーシックな淹れ方やオンザロックを試しながら、お茶を日常の一部にしてみてほしい。

    西形圭吾|Keigo Nishigata
    静岡県藤枝市出身。デザイン会社や映像編集スタジオ勤務を経て、2013年より幼馴染みで藤枝市で茶農家を営む中村家4代目の中村倫男さんとオーガニック日本茶ブランドNAKAMURAの運営を開始。2015年にNAKAMURA TEA LIFE STOREを蔵前にオープン。現在、試飲など一部サービスは休止しているが、茶葉の販売は通常通り営業中。
    tea-nakamura.com
    facebook.com/nakamuratealifestore (Facebook)
    instagram.com/nakamuratealifestore (Instagram)

    Photo: Eisuke Asaoka
    Text: Rie Noguchi
    Edit: Yoshiki Tatezaki

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