• 茶葉だけではなく“体験”もセットで贈りましょう
    [茶屋すずわ]謹製 静岡茶5種のブレンドを楽しむ<後編>

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    茶葉だけではなく“体験”もセットで贈りましょう [茶屋すずわ]謹製 静岡茶5種のブレンドを楽しむ<前編>

    こちらのインタビューの一部が音声(Spotify)でも公開中 大切なギフトに日本茶を そう聞くと少し古臭く感じるでしょうか? たしかに、贈答品としての日本茶は歴史が比較的長く、慣習のようなイメージがあるかもしれません。一…

    2022.07.22 INTERVIEW茶のつくり手たち

    こちらのインタビューの一部が音声(Spotify)でも公開中

    静岡のお茶づくりが詰まった一箱

    静岡[茶屋すずわ]の渥美慶祐さんが「自分が好きなお茶たちを選んだ」5種類の静岡県産茶葉のセット。「CHAGOCORO【祝】ギフト」と銘打ったこのギフトセットは、美味しい茶葉だけではなく、その茶葉を自分なりに淹れたり、あるいは混ぜ合わせてブレンドをしたりできる“体験”や”お茶する時間”を贈る一品となっています。

    「こうしてセットにしていただけるというのは嬉しいですね。“静岡茶”とひとくくりにされることが多いのですが、静岡県の中でもいろんな産地があって、お茶が育つ環境も全然違う。さらに農家さんによってこだわっていらっしゃる部分が違うので、こうしたセットをきっかけに、そうしたことに触れていただけるのはすごく嬉しいです」

    個性を掛け合わせる日本茶の楽しみ方

    前編で渥美さんに解説いただきながら1種類ずつ飲ませていただいたように、色も違えば、香りも味も違う。どれも“同じお茶”なのに。小さな一杯に、今まで知らなかった驚きが感じられる体験はきっと面白いはずです。

    「お茶のすごくいいところだと思うのが、僕らがお届けするものがまだ“完成品じゃない”ところ。買われていった先で、買われた方が淹れるという手を加えないと飲むものにならないですよね。それがすごくいいなって思うんです。贈り物としても、それっていいことだと思います」

    自分で淹れてみて個性を感じ取ったら、それらを掛け合わせてみることができるのが今回のセットのポイントです。2種類でも、比率を1:1にするか、2:3にするか、4:1にするかで味わいが変わるからまた面白い。合計5gにすることを基本に、配合の割合を工夫してみてください。

    こうしたブレンドは、日本茶の世界では「合組(ごうぐみ)」と呼ばれます。生き物であるお茶の葉を量的にも質的にも安定した茶葉に仕立てる上で、欠かせない技術。渥美さんのような製茶問屋と呼ばれるプロが担う、日本茶づくりにおいてとても重要なプロセスです。

    最近では、「安定」というだけではなく、「表現」という観点から合組をクリエイティブなお茶づくりとして見直す動きが加速しています。

    そんな合組、少し難しそうに感じる方もいるでしょうか? そこはご心配なく。正解のない世界。茶葉を送り出す渥美さんも、むしろ何も知らない方の感性に興味津々のようです。

    「仮に知識がなくても、きっと心が入るんですよね。味以上に、直感とか想いみたいなものがお茶に乗っかってくると思うんです。だから僕は『どういう感じで作ってくれるのかな』って想像するのが面白くて。贈り物としてあげた方も、相手に『どんなお茶になった?』とかって聞いて、そこからまた物語が続いていったりしたら、それってめちゃめちゃいいですよね」

    [茶屋すずわ]の渥美慶祐さん

    茶缶も茶産地のつながりで

    最後に、ギフトセットの裏話を一つご紹介。茶葉が入る茶缶の上蓋には「Ocha SURU?」のロゴがあしらわれていますが、なんと一つひとつ手作業で印刷されています。

    手がけるのは渥美さんも信頼を置く、創業101年の[鳥居製缶]。会社の場所も[茶屋すずわ]から歩いて数分の距離。[鳥居製缶]を訪問し過去に手がけたサンプルを見させていただくと、CHAGOCOROに登場したこともあるあのお茶屋さんやこのお茶屋さん、また都内の有名ホテルなど多くの要望に応えてきた実績が見て取れます。

    こちらは、「CHAGOCORO【祝】ギフト」の茶缶専用に作られた塗料。最適な塗料を仕入れながら、さらにそこから理想の発色になるように[鳥居製缶]が調合した、いわばここにしかない緑色。

    ロゴが再現された専用の版を昔ながらの機械にセットし、蓋に一つひとつプリントしていきます。

    中央に正しく印刷されているか、目で確認します。カスレが出たものはもちろん不合格。オリジナルのデザインを柔軟かつ正確に缶の上に再現する技術が、多くのブランドから頼られるゆえんです。

    [茶屋すずわ]のこちらの缶も[鳥居製缶]によるもの

    お茶を育てる生産者、茶葉に仕立てるお茶屋、それから大切な茶葉を収める茶缶まで、お茶づくりにまつわる全てが揃う静岡の底力を見ました。

    「缶にしても一つひとつ作っているんだとか、お茶もこういう工程で作られているんだっていうことをたまに考えると面白いですよね。静岡はやっぱりそういうところはすごいですし、質が良いのが当たり前、くらいのところがあるので。さらにこれからは、産業として完結するのではなくて、カルチャーとしても盛り上がるといいなと思っています。ある意味あって当たり前の日常のお茶という側面が強いので、どういう飲み方をしたらもっと楽しいかとか、そういったこともこの機会を通じて見えてくると嬉しいですね」

    そうしたお茶の景色を見るためにも、渥美さんは今回のセットが今までお茶をあまり飲まないような人たちに届くことも楽しみにしている様子でした。

    「お茶の良さって、味とか香りの楽しさももちろんありますが、お茶する時間をつくることで、季節のよさとか、花のきれいさとか、空の青さとか、そういうものの良さを感じられるんですよね。そういった時間をつくっていただけたらいいなと思いますし、またそれを贈るというのもすごく素敵だと思います」

    ぜひ皆さんも自分なりにお茶とその時間を“完成”させてみてください。

    渥美慶祐|Keisuke Atsumi
    静岡市の[茶屋すずわ]店主。創業170年の茶問屋・株式会社鈴和商店6代目として茶問屋を営む傍ら、「現代の茶屋、人々の暮らしになくてはならない大切で優しい寛ぎの存在」をコンセプトに、お茶とそのまわりの物を扱う同店を2017年にオープン。これまでお茶に興味がなかった人に少しでもお茶のある暮らしの良さが届くよう、日々発信している。
    chaya-suzuwa.jp
    instagram.com/chayasuzuwa

    Photo: Kumi Nishitani
    Text: Yoshiki Tatezaki
    Produce: Keisuke Mizuno and Kenichi Kakuno

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