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2021.03.12

茶農家と茶問屋とともに
お茶を日常のものへ
Chabashira 杉山将夫さん
<後編>

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「日本茶の楽しさや安らぎを多くの人に」と、ティースタンドでのドリンク販売から活動が始まったChabashira。主宰・杉山将夫さんは、茶農家を訪ねてはいろいろな品種を飲んでお茶を学び、茶問屋との付き合いが増えるにつれてその製茶や焙煎の技術に魅了されていった。その自由な活動は領域を越えて加速していく。前編に引き続き、後編でもお茶を淹れていただきながら、安倍川支流の川辺でお話を伺った。

Chabashiraの定番・深蒸し煎茶

昨年2020年1月から3月末まで、Chabashiraは渋谷の[TOKYO BENTO STAND]で週末限定のお茶屋を開いた。

「お店のディレクションをしたSEESEE(静岡挽物という伝統的な木工技術を現代的に落とし込むホームウェアブランド)からの静岡繋がりと『弁当にはお茶』ということで話がきたんですよ。以前、東京では水道水のカルキ臭がきつくて、それに負けないように火を強く入れたお茶が好まれたと聞いたことがあって。それって東京のティーカルチャーだなと思い、『TOKYO GREEN TEA』と名付けて提案させてもらいました。火を強く入れて味をさっぱりさせ、香りもちゃんと立つよう、すずわさんに仕上げてもらっています」

オリジナルドリンクの他に茶葉も販売。すべて一煎パックで出していたことも功を奏し、思っていた以上の売れ行きぶり。お客さんには若い世代の女性も多かったというから、まだまだ街ではペットボトル以外に飲む機会が少ないお茶の可能性を存分に感じたことだろう。お茶をアップデートするべく、自由度高く横断的に活動するChabashiraは非常に貴重な存在に映る。

ここで2杯目。深蒸し煎茶を淹れていただいた。茶葉は島田市初倉産、品種はやぶきた。まず香る。前編の浅蒸しのものと比べると細かい茶葉がお湯で膨らむまで、贅沢な時間がゆったりと流れる。

「まず香る」が杉山さんの淹れ方の作法

急須も胴部分が長いものを使い、円を描くように回しながら注がれる。日本茶カフェ[茶空間](2020年2月閉店)で教えたもらったこの淹れ方は、遠心力を使うことで急須内で茶葉同士がぶつかり合うことがない。そのため、雑味が出ないことに加え、味にも深みをもたらす。そしてなによりその所作が美しいのだ。随所随所にお茶の楽しさが溢れる。

「茶葉はChabashiraのメンバーの茶畑で採れたものなんですけど、当初は荒茶仕上げで作っていたんです。すると味が強く感じて。それで[茶空間]で飲んだ深蒸しのお茶が美味しかったので、僕らのを飲んでもらって『仕上げしたらもっと美味しくなるよ』とアドバイスをいただきました。仕上げの工程を改めて理解したら、製茶問屋さんはやっぱりすごいなと実感しました」

Chabashiraでの製造量は多くはないものの、快く受けてくれる茶問屋や加工業者の協力で成り立っていると感謝する杉山さん。「僕らが注文する鮮度感を残しつつも火香が若干つくギリギリのラインで火入れしてくれたのでほんとにすごいなと」とリスペクトも忘れない。

茶農家も茶問屋も一緒になってお茶を発信していく

杉山さんの野点セット。桜を使ったブレンドティーを

その他、Chabashiraでは日本茶に和ハーブをブレンドしたお茶もつくっている。「紫蘇」「金木犀」「薄荷」「柚子と山椒」などのラインナップは山梨のハーブ農家[HERBSTAND]との出会いから生まれたものだ。そのこだわりをこう語る。

「日本茶が前面に出なくても良いと思っています。日本茶をメインにブレンドしがちですが、日本茶は超繊細なのでそれだとまとまらない。そこで、ハーブで香りを出して、日本茶で旨味やコクといった奥行きの部分を出すイメージです。裏方になれる、それもまた日本茶の持っている良さの一つだと考えています」

そしてこの春、新作の桜フレーバーのハーブティー「桜と黒文字ブレンド」が発売となる。

「お茶で季節を感じられるものをつくりたいと思って。僕らも意図してなかったんですけど、[TOKYO BENTO STAND]のとき、お客さんが『紫蘇や薄荷は春夏、金木犀は秋冬』とどこかで四季を意識しているように感じたんですよ。それでこの春は桜でやろうかなと。[HERBSTAND]さんとも考えて、緑茶に桜葉、黒文字、黒豆、熊笹などをブレンドしました。黒文字の綺麗な香りのあとに桜の香りがふわりと漂う、春のポカポカ陽気みたいなお茶です」

ハーブの名前から味や香りまでイメージするのはなかなか難しい。そこは杉山さんも「飲んでみないと、まったく想像がつかないと思うので“ふつうに美味しい”のが大事かなって。ただ、味に関しては絶対的な自信を持っています」という。さらにこう続ける。

ティーバッグタイプのハーブティー「ほうじ茶と柚子のブレンド」。ブランドのアイコンである雉がティータグに

「僕らが売れるものだけしかやらないって、先がないと思うんですよね。結局、老舗のほうが信用度も目利きもあるので。そこで勝負しても敵わない。だからChabashiraは売れ筋商品をつくりつつも、老舗がやらないような遊び心のある面白いことをやり続けていこうかなと」

「次の世代に向けて、小さいお子さんにも飲んでもらえるようなお茶の提案も考えているところです」

女性ファッションブランドとオリジナルブレンドティーをつくったり、アレンジティーを考えるときには紅茶ブランドを参考にしたり、この4月には静岡市の日本料理店とのコラボレーションを画策したり。Chabashiraの活動の自由度は増すばかりだ。これまで日常のものとして触れてきたお茶文化に対しても今まで以上に興味が湧いているという杉山さんが今思うこととは。

「農家さんも茶問屋さんもみんなめちゃめちゃ頑張っているんですよ。その頑張っている方向は同じだから、個々で闘うんじゃなくて一緒にコミュニティになってやっていったほうがいいと思うんです。そのほうが発信力も広がりますし」

安倍川、大井川、天竜川、太田川などが流れ、地形的に山と里が近い静岡。お茶の特徴も地域ごとで少しずつ違うなか、「頑張っている方向は同じ」という杉山さんの言葉に、お茶好きなCHAGOCORO読者の皆さんもホッとしたのではないか。まさに「茶柱が立つと縁起が良い」を地で行っている。静岡からアップデートされて発信されるお茶文化のこれからをどうぞお楽しみに。

Chabashira|チャバシラ
2016年、静岡県島田市にて明治から5代つづく現役お茶農家と仲間の3人でプロジェクトをスタート。出張ティースタンドやイベント企画、メニューのプロデュースなどを通じて、自分たちに身近な存在である日本茶に触れてもらう機会を創出している。杉山さんは電気設備の会社を営むかたわら、Chabashiraでさまざまな企画を進めている。
chabashira.theshop.jp
instagram.com/chabashira.japanesetea

Photo: Yuri Nanasaki
Text: Yoshinori Araki
Edit: Yoshiki Tatezaki

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